「馬車馬のように働いていた」頃の筆者の部屋
反発した人は「仕事があまり楽しくない」と感じている?
私自身は1997年に会社員になってから、フリーランス編集者時代を経て2020年11月に半隠居生活を開始するまでは、それこそ馬車馬のように働いていました。2006年からは年間364日労働する生活が続いていましたが、それで苦痛だったかといえばそうでなく、案外楽しかった。
ほぼ毎日酒を飲みに行き、旅行先でもネットは繋がるため、同行者が遊んでいる中、ホテルに残って仕事をし、目途がついたら合流したりしていました。それでも苦痛はなく、ワークライフバランスは達成されているな、と思ったものです。
過労死した人の遺族や精神的に病んで休職している人に対する配慮は必要ではあるものの、あの文脈では「自民党の議員は働いて下さい。私もそれ以上に働くつもりです」という宣言かつ決意表明でしょう。ただ一言「国民の皆さんは、ワークライフバランスを実現し、QOLの高い人生を送ってください」と言っておけば良かったかな、とは思いました。ここまで過剰反応されるとは思ってもいなかったのでしょう。
正直、今回、高市氏の発言に反発した人は、仕事があまり楽しくないのかな、とも思いました。新型コロナウイルスの感染が拡大していた時代、「なぜそこまでしてPCR検査を何度も受けて陽性になろうとするのか?」とXで聞かれた人が、「会社を堂々と1週間休めるから。なんならもう一度感染したい」と答えていました。
誰もが仕事を楽しんでいるわけではなく、決められた時間はオフィスに拘束され、給料を得ることだけが目的、という人もいるのです。私自身は「オンとオフ」「プライベートと仕事」みたいな考え方をしたことがないので、仕事をさぼりたい人の言い分というのはよく分からない。だから今回の高市発言にそこまでキレないでもいいのでは、とは思う。
まぁ、国会議員の先生方は議場で昼寝しているから、そこそこ休息も取れているんじゃないですかね。移動も座り心地の良いアルファードとかでしょうし、新幹線もグリーン車。あんまり我々が心配するようなことではないと思いますよ。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。