成年後見制度を利用すると、亡くなるまで財産は家裁の管理下に
このように、親の認知症が進行して本人に関する諸手続きが頓挫する場合は、「成年後見制度」の利用が有効な対策として知られている。だが、同制度にもこんな盲点があると、東京国際司法書士事務所の代表司法書士、鈴木敏弘氏は言う。
「家庭裁判所が受理すれば、子が後見人になることは可能です。ただし、後見人になると年に1度の家庭裁判所への報告義務があり、後見事務報告書や財産目録の作成など、専門知識がなければ難しい煩雑な作業負担が生じます。さらに、弁護士や司法書士などの専門家に後見人を依頼すれば、月数万円の費用が亡くなるまでかかることも忘れてはいけません」
村山氏もこう言う。
「成年後見制度を利用すると、財産は本人が亡くなるまで家裁の監督下で管理されます。そのため、『家族への生活費援助』や『孫へのお祝い』といった、本人がそれまで行なっていた支出も認められなくなる可能性があります。役所や金融機関の諸手続き、不動産売却などで法的に後見制度を利用する以外ない、という状況を除き、メリット、デメリットを慎重に判断することが求められます」
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※週刊ポスト2025年10月31日号