Bさん(30代女性、PR会社)も、Aさん同様、現金のみだと言われたことがあるという。
「勤務地は赤坂。自宅は横浜です。疲れてタクシーで帰ろうとしたとき、ヴェルファイアのような、大きな個人タクシーが通りがかったので、これはラッキーだと思って止めたんです。セダンでもヴェルファイアでも、料金は同じですからね。でも乗るなり、『現金しか使えない』と言われてしまい、現金はあまり持っていなかったので、申し訳ないなと思いつつ、コンビニに行くのも手間だし、仕方ないので乗るのを諦めました」
基本はキャッシュレスの乗客も現金も用意する自衛策
現金のみだと運転手から伝えられて、利用者が降りるのは「アリ」なのか。個人タクシーの運転手をしているCさん(70代)はこう語る。ちなみにCさんのタクシーはキャッシュレス決済を導入済みだ。
「もちろん“アリ”ですよ。お客さんにだってタクシーを選ぶ権利はあるし、お金を持っていないのに乗るわけにもいかないからね。現金しか対応していないというタクシーの理由はそれぞれだろうけど、個人タクシーなら、先にカードが使えるかどうかは確認するとトラブルもないと思う」
タクシーの利用者のなかにも、“基本的にキャッシュレスで払うが、一応現金を持っておくようにしている”と自衛策を講じている人がいる。Dさん(40代女性)が語る。
「以前、システムトラブルでキャッシュレス決済ができなくなったんです。法人でした。運転手さんが会社に問い合わせてくれるもぜんぜん復旧できなくて、結局後日、請求書対応になりました。システムなのだから当然エラーもあるなとその時に痛感。以来、現金も一応持ち歩くことにはしています。そうしておけば、間違って現金払いのみのタクシーに乗ってもトラブルにならないですしね」
現金かカードか。たったそれだけの違いが、思いもよらない行き違いを生むこともある。技術が進み便利さが増すほど、乗客、運転手が互いの前提や事情にとらわれずに寄り添うことが求められているのかもしれない。