たしかに夫婦共同生活のために形成された財産は、夫名義であっても実質的には夫婦共有財産と理解され、離婚の際には、その名義にとらわれずに財産分与で考慮されます。ご質問の件も受取人を妻とするものですから、目的は万一の場合の扶養です。保険料も月給などの家計維持のための収入から拠出されていれば、解約返戻金は実質的な夫婦共有財産といえます。
そうであれば、ご主人が解約返戻金を個人の利益のために勝手に受け取ったのですから、あなたの持ち分を受け取ったことになり、返せと言いたいところです。
しかし、「実質的」と表現されているように、具体的な持ち分として共有者が一定の割合を主張できる普通の共有とは解されていません。
ですから、いまの時点で請求は難しいと思います。また、いま請求しても、あなたへの返金の出どころが家計費に充てるご主人の収入ならば、あまり意味はありません。
しかし今後予定の離婚の際には、財産分与が問題になります。分与の額やその方法は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して決まりますから、解約返戻金のご主人の独り占めもその中で評価されます。その日に備えてきちんと記録を残しておきましょう。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2025年11月13・20日号