解約返戻金を独り占めするなんて…(イラスト/大野文彰)
離婚の際には、財産分与で揉めることも少なくない。では、離婚を前提として別居をしている間に、夫が生命保険を勝手に解約し、返戻金を受け取った場合、妻は手にする権利はないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
現在、離婚に向けて夫と別居中です。先日、夫が契約者で受取人が私になっている生命保険を、夫が勝手に解約しました。解約返戻金は夫が受け取ったので、「私にももらう権利がある」と言ったところ、「保険料を払ったのは自分だから、自分だけがもらう権利がある」と断られました。
まだ離婚していないのに、私にもらう権利はないのでしょうか。(島根県・40才女性・パート)
【回答】
生命保険の解約返戻金は生命保険を解約できる保険契約者が取得するので、受け取る権利は契約者であるご主人にあります。
夫婦の一方が「婚姻中に自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう)とする」のが民法の原則で、夫婦別産制といいます。解約返戻金はご主人の特有財産ですから、文句は言えません。
しかし、夫婦がそれぞれ収入を得て自分名義で契約したり、資産を取得できる場合には問題ありませんが、専業主婦のように家計の収入を夫に頼っているような場合、収入がない妻は無償の家事労働で貢献しているのに財産を形成できず不公平です。とはいえ、60年以上前ではありますが、最高裁は離婚のときには財産分与があるし、相続や扶養請求権等の権利があるから男女平等を保障した憲法に違反しないと判断しました。
