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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方
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世界中で進行する右傾化・保守化の根本にある問題 人手不足解消のために、日本が参考にしたいドイツやオーストラリアの移民受け入れ策を大前研一氏が解説

移民を受け入れるには財源も必要(イラスト/井川泰年)

移民を受け入れるには財源も必要(イラスト/井川泰年)

 主要国で保守政党が躍進する一方、労働力不足の問題を解決するため、移民受け入れが必要な国も少なくない。移民受け入れには様々な問題が付きまとうが、経営コンサルタントの大前研一氏は「ドイツやオーストラリアの移民受け入れ策が参考になる」と提言する。右傾化・保守化が進む主要国の現状と合わせて、大前氏が解説する。

 * * *
 保守派の高市早苗政権が誕生した。本連載で書いたように、高市氏が自民党総裁選挙で提唱した公約・政策は「皇統が男系で引き継がれるよう皇室典範を変更」「自衛隊の憲法明記」「スパイ防止法制定」などである。

 保守化・右傾化は世界的な傾向だ。たとえば、アメリカのトランプ大統領は「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」を唱えて実行し、様々な国際条約や国際組織から脱退している。

 ヨーロッパでは、イタリアで20世紀前半の独裁者・ファシストのムッソリーニを崇拝するメローニ首相が誕生したのをはじめ、ドイツではAfD(ドイツのための選択肢)、イギリスではリフォームUK、チェコではANO2011といった右翼政党が台頭している。日本でも右翼の参政党が躍進し、日本保守党も参議院で2議席を獲得した。

 しかし、こうした保守化・右傾化は、対極にあるとされる左派・労働運動と実は“同根”である。

 その象徴の1人が、アメリカのバンス副大統領だ。彼は「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」のオハイオ州のプア・ホワイト(貧しい白人)家庭に生まれ、祖父母のアルコール依存症と虐待や母親の薬物中毒、白人貧困層の肉体労働者たちの悲哀などを描いた自叙伝『ヒルビリー・エレジー』がベストセラーになった。そして、かつてはトランプ大統領を「ドアホ」「詐欺師」「最もうざいセレブ」「アメリカのヒトラー」などと罵倒し「僕はNever Trumper(永遠にアンチトランプ)だ」とまで言っていた。

 ところが、その後、上院議員選挙への立候補を前に態度を180度変えて全面的なトランプ支持者に“転向”し、2022年の中間選挙でトランプ氏の支持を受けて当選した。

 日本でも、全学連の活動家や日本共産党の党員から保守派に転向した人は少なくないが、要するに所得が平均以下で社会的・政治的に冷遇されていると思っている人たちが、そのはけ口をどこに求めるか、誰を攻撃対象にするかによって、左派になったり右派になったりするのだ。

 自分の所得が低い原因について、左派の人たちはマルクス・エンゲルス時代からの伝統で資本家が搾取しているからだと考え、労働組合運動などを展開して資本家や経営陣を批判する。一方、右派の人たちは移民・難民が安い給料で働いているから自分たちが割を食っていると考え、外国人を排斥しようとする。左派と右派は同じセグメントなのだ。

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