どこか引っかかる「プロをアマチュアが褒める」行為
私も一応はプロの文筆家です。「うわー、文章うまいですね」なんて言われたら「そりゃぁ、もうこの世界で24年間カネを稼いできたのでうまいもヘタもなく普通にやってるだけです」と言うしかありません。謙遜でもなく、卑下でもない正直な思いですが、プロの料理人も同じような感覚を抱くのではないでしょうか。
だからこそ、Yシェフのハゼの天ぷらの写真に対してどのような感想を述べるか悩んだのです。結果的に「これはご家族皆で楽しめる素晴らしい天ぷらですね!」という無難な方向に持って行きました。Yシェフは「おいしそう!」「さすがプロ!」という感想に対しても悪い気持ちは持たなかったと思います。しかし、私は「プロをアマチュアが褒める」という行為が、どうしても引っかかってしまうんです。なんか、プロフェッショナルに対して敬意を欠いているような気がしまして……。
基本的に、誰かを褒める行為は波風が立ちにくいものだとは思いますが、褒めるにしても、その褒め方というものは難しいと感じました。悪口は簡単ですが、褒め言葉はかなり高度なテクが必要ですね。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は倉田真由美氏との共著『非国民と呼ばれても コロナ騒動の正体』(大洋図書)。