神社や公園も多い清澄白河(富岡八幡宮。写真:イメージマート)
東京都心部の不動産価格上昇が続き、“マンションバブル”とも称される現状がある。しかし、投機マネーの流入がいつまで続くかは不透明であるうえに、今後は東京都にも人口減少の波が訪れると考えられている。そうしたなかでは、東京都全体の不動産価格が一本調子で上がり続けるとは考えにくい。同じ東京23区内でも「街」ごとに差が生じるようになると見るのは、不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏(オラガ総研代表)だ。
不動産経済研究所が10月に発表したところによれば、2025年度上半期(4~9月)の東京23区の新築マンション価格は前年度同期比で20.4%上昇して1億3309万円となった。ただ、実需よりも投資のための資金流入も大きく、今後は金融マーケットの動向に大きく左右されると牧野氏は見ている。
では、実需による下支えが続くと考えられるのはどういったエリアになるのか。皇居(江戸城)の西側にあたる世田谷区、杉並区、中野区などの「城西エリア」に比べて、相対的に物件価格が安い江東区、墨田区、台東区、やや北寄りの足立区なども含めた「城東エリア」の人気が高まっているが、牧野氏は「城東エリアの同じ区内でも、『街間格差』が生まれると考えられます」と話す。
牧野氏は東京五輪前の2019年に著書『街間格差』(中公新書)を上梓しており、そこでは街ごとの個性、魅力によって将来の明暗が分かれる可能性が詳細に綴られている。牧野氏が言う。
「城東エリアでの街間格差を考えた時に、確実に大きいポイントとなるのが利便性です。夫婦共働きでそれぞれが通勤をするうえで、なるべく会社に近いところが好まれる。もちろん、城東エリアのような下町が好きという人もいますが、選ぶうえで一番の理由を挙げるなら利便性ということになる。働く世代に人気の江東区などは、都心までの時間距離を考えて非常に合理的な街だと言えます。
東京は世界的に見ても特出した鉄道社会です。勤労者のほとんどが鉄道を利用して通勤します。当然、鉄道によるアクセスでターミナル駅が近いほど、街としての人気が高まる。わかりやすいのが東京メトロ半蔵門線の沿線です。『水天宮前』(中央区)から延伸され、『錦糸町』『押上』(墨田区)に向かって江東区を南北に貫いています。半蔵門線の存在によって大手町・日本橋エリア、あるいは渋谷・青山方面へのアクセスが飛躍的に向上し、この沿線エリアの発展に大いに貢献しました」(以下、「」内コメントは牧野氏)
