“不夜城”時代
――2006年にリクルートに転職して、参院選に出馬するまでの10年間、リクルートで働くわけですが、印象に残っていることはありますか?
伊藤:とにかく毎日、吐くほど働いていました。深夜まで残業した後、同僚らとよく24時間営業の回転すし屋に行っていたのですが、いつも「iPhoneのような優れたデバイスが行動変容を促すのか? 人間の行動変容が新たなデバイスを生み出すのか?」「人はデバイスに集まるのか? コンテンツに集まるのか?」「リクルートが生き残るために、今あるキャッシュフロー500億円を何に投資すべきか」など、答えの出ない議論を延々としていました。
そうしていると夜が明けてしまい、夕食も朝食も同じ店で食べてから、そのまま出勤したことも一度や二度ではありません。
――今では考えられない働き方ですね。
伊藤:働き方改革関連法施行前、リクルートのオフィスビルがまだ「不夜城」と言われていた頃の話です。
この働き方改革関連法について、ある政治家と残業について議論していた際、私が、「“仕事の褒美は仕事”という環境では、例えば中途採用者の教育担当に抜擢されて、自分の仕事と新人の仕事の2人分の責任を負い、場合によってはトラブル処理も生じて3人分の仕事量になったりするのが労働者。制度で担保しないと残業を減らすことは容易ではない」と言ったところ、その方は「人間は2人なんだから、3人分の仕事量には、どうやってもならないだろう」とおっしゃるのです。あまりに現実社会への理解が薄いので、経歴を調べてみると“雇われた経験”がなかったりして。
政治家の浮世離れした経歴は、的外れな政策を生んでしまう根本原因でもあるので、軽視できません。