民間仕込みのスピード感とマーケティング能力
――7月の参院選では、国民民主党は躍進しましたね。
伊藤:ありがとうございます。正直、躍進といっていただくと一片の戸惑いがありますが、比例得票数は自民党に次ぐ762万票で2位。2020年9月の結党時には衆参あわせて15人だった議員を50人にまで増やしていただきました。ようやく国民民主党単独で予算を伴う議員立法をすることが出来ます。
――伊藤さんは今回、非改選でしたが、全国を応援演説で駆け回りながら、SNS運用やAIを活用したファクトチェックなど、国民民主党のコミュニケーション戦略を一手に引き受ける八面六臂の活躍で、改めて「パワフルだなー」と感心していました。あのパワーはリクルート仕込みですか。
伊藤:やりきる姿勢や、走りながら考えて決めていくスピード感はリクルート仕込みかもしれません。同時に、リクルートで働く以前のテレビ局での営業や報道記者の経験も、国民民主党のコミュニケーション戦略をインハウス(内製)化していくには欠かせない要素です。
これまでの政党のコミュニケーション戦略、特に広報宣伝は“広告代理店に外注”するのが当たり前でした。しかし、ネット社会における政党の発信は、戦略策定から意思決定、クリエイティブ制作、ターゲティングや効果測定、軌道修正が絶えず必要で、広告代理店と“打ち合わせを重ねる”ような時間はなく、インハウスでないと成り立ちません。
それに、政策を伝えるための言葉を外注してしまっては、伝わるものも伝わらない。「政治は言葉」といいますが、本当に繊細なのです。 例えば、「障がいのある人」と「障がいを持つ人」どちらの言葉をふだん、使われますか?
――うーん。「障がいを持つ人」かな?
伊藤:私も以前はそうでした。でも今は「障がいのある人」と言うことにしています。障がいは「持つもの」ではないと、当事者の方に教えていただき、ハッとしました。
私が政治家を志したのは、次女の耳に障がいがあると言われたことがきっかけです。確かに、障がいは受け止めるものでも、乗り越えるものでもありません。ただそこに「ある」もので、ただただ愛しい我が子です。
――メディアの内側を知っているだけでなく、マーケティングやデジタルにも強い議員が広報宣伝の責任者をやっているというのが他党にはない強みですね。
伊藤:マーケティング調査の設計から関わっている議員は他にはいないかもしれません。時折り、マーケティング=ポピュリズムと批判されることもありますが、自党の見え方、見せ方の工夫をする上で、定性・定量のデータ分析は欠かせません。