危機管理上は「副首都を固定」することもリスク
大阪都構想の実現を前提とした維新の会の素案に対しては、野党はもとより自民党内にも反対意見がある。大阪都構想をめぐっては、自民党大阪府連が維新の会と激しく対立してきた経緯があるからだ。このため、維新の会の素案をベースとして、最後まで与党内の議論が進むかどうかは現時点では見通せない。
いささか強引な印象を受ける維新の会の素案は一旦脇に置くとして、副首都構想自体は多面的な検討を要するテーマだと言える。国土のカタチを大きく変えることにつながるためだ。
そもそもの問題として、「なぜ副首都が必要なのか」という根本的な部分を明確にして検討を進めなければならない。
これに関しては、自民党と維新の会の連立合意は、副首都を創設する目的として、(1)首都の危機管理機能のバックアップ体制の構築(2)首都機能分散および多極分散型経済圏の形成──の2点を掲げている。
だが、危機管理上のバックアップ機能を求めるならば、副首都は1つの都市に絞り込まないほうがよい。国土面積の狭い日本においては複数の大都市が同時に被災することは十分あり得ることだからだ。副首都を固定してしまうと、「首都も副首都も機能しない」ということなりかねない。たとえば、南海トラフ地震が起きたならば大阪を含む広範囲で被害が生じ得る。
こうした状況を避けるには、いくつかの政令指定都市を「副首都候補都市」として定め、あらかじめ順位づけしておくことだ。たとえば、東京が大規模な自然災害に襲われた際、「候補都市」の中から被害のなかった都市を、事前の順位付けに応じて「臨時の首都」にする仕組みだ。
首都の危機管理を言うのであれば、政府機関だけを分散・移転させても仕方ない。最も重要なのは住民の命であり、副首都構想は東京の減災政策の推進とセットで考える必要もある。