労働寿命を延ばすことで資産寿命も延びるのは歓迎すべきことだが、そこだけにあくせくしすぎるのも人生の旬を見誤ることになりかねない。
「5つの寿命のなかでも、資産寿命は誰もが気になるところでしょう。しかし、誰かと比べて不安になるよりも、まず自分の持っている財産をきちんと把握し、管理することが第一です」(同前)
楠木氏はズボラでもできる財産管理法を推奨する。
「半年ごとに持っている現金や株式の財産の額をすべて書き出して半年前との増減額を把握するだけです。2年もすれば自身の財産の状況が把握できるようになります。これはひとつの方法ですが、自身の財産を管理している人は老後のお金の不安を抱きません」
これらを意識したうえで、残り10年で自分がしたいことをやりきるのが幸せだという。
「“人生をリメイク”するつもりで、子供の頃にやりたかったことをもう一度やってみる。音楽、映画、スポーツ、学び。自分が主体的にやりたいことがポイントです。小さなことで良いのです。10年やれば、結果の大小は別として自分なりの土俵を持つことができます。臆せず挑戦してみることで自分なりの“旬”を手に入れることができるでしょう」(同前)
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【プロフィール】
楠木新(くすのき・あらた)/1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。2015年に定年退職。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。著書に『定年後』『定年準備』『転身力』(中公新書)、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『75歳からの生き方ノート』(小学館)、『定年後の居場所』(朝日新書)など多数。
※週刊ポスト2025年12月19日号