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「唐揚げ店が静かに姿を消している」飲食店の倒産が過去最悪ペース 立ちはだかるのは「本音の口コミ」、消費者の信頼を勝ち得るために求められる施策とは

企業側が発信する情報より信頼される口コミ

 ここで注目すべきは、現代の消費者がどのようにして店を選び、足を運ぶかという行動原理だ。広告や看板よりも、消費者が強く信頼を寄せるものがある。それは、同じ消費者によって発信される「口コミ」だ。この現象を学術的に裏付ける興味深い研究がある。2024年に発表された論文「The Effect of Electronic Word of Mouth on Food and Beverage Purchase Intentions(食品および飲料の購買意欲におけるエレクトロニック・ワード・オブ・マウスの影響)」は、デジタル空間における口コミ(e-WOM)がいかに強力な購買決定要因となるかを解き明かしている。

 この研究の特筆すべき点は、その信頼性の高さにある。著者のレリー・スレスティヨコらは、2014年から2024年までの10年間に発表された膨大な文献の中から、「Scopus」という世界的に権威あるデータベースに登録された論文のみを抽出した。さらに、その中からQ1からQ4という厳しいランク付けで評価された質の高い国際ジャーナルに掲載された52本の論文を厳選し、体系的な分析を行っている。つまり、単なる一事例の報告ではなく、過去10年間の世界中の知見を凝縮した、極めて精度の高い分析結果なのである。

 その分析によれば、TikTokなどのソーシャルメディア上での口コミは、消費者の「情報の信頼性」と「情報の採用」という心理プロセスを通じて、購買意欲に決定的な影響を与えるという。論文内では、そのメカニズムについて以下のように結論付けられている。

「口コミの影響における重要な要因には情報の信頼性が含まれ、これは情報源の信用度を指す。この信頼性が情報の採用を促進し、消費者は共有されたコンテンツを受け入れ、意思決定に使用する。(中略)信頼できる口コミはより強い消費者の信頼を育み、それによって購買意欲を高めることが強調されている」

 消費者は、企業が発信する美辞麗句よりも、自分と同じ立場の人間が発する言葉を信じる。情報源が信頼に足ると判断されたとき、その情報は初めて消費者の内側に取り込まれ、行動、すなわち来店や購入へとつながるのである。研究データは、インターネット利用者の9割近くが購入前に検索を行い、「推奨」や「肯定的なレビュー」が店舗選びの決定打となっていることを示している。

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