京都付近を通過する東海道新幹線の列車。東海道新幹線では、修学旅行のための団体臨時列車が今も走っている
日本で最も歴史ある旅行会社である日本旅行が創業し、列車による団体旅行が始まったのは1905年のこと。今年2025年は、それから120年目を迎えているわけだが、列車による団体旅行はどのような隆盛をたどっていったのか。交通技術ライターの川辺謙一氏が日本旅行の協力を得て、団体旅行の歴史を振り返る。
最初の目的地は高野山・伊勢神宮、次いで善光寺
日本旅行は1905年に滋賀県粟太郡草津町(現在の草津市)で創業した。鉄道の団体割引制度を活用し、多くの人が気軽に「旅」を楽しめるようにすることが、その狙いだった。
同社は同年に国内初となる列車による団体旅行を企画し、実施した。これが日本の団体旅行の始まりだ。
和歌山県の巡礼の地である高野山。国内最初の列車による団体旅行の目的地の一つとして選ばれた
このとき目的地に選ばれたのは、高野山と伊勢神宮だった。どちらも近畿地方を代表する巡礼・参詣の地だ。その3年後の1908年、創業の地・草津から長野県の善光寺へ、団体臨時列車を利用した団体参拝が企画され、旅行業はここから始まったとされている。それまでの日本には、「旅」を商品にした事例がなかった。
その後は、おもに鉄道を利用する団体旅行の利用者が増えた。日本では、道路網や航空網の整備が長らく遅れていたため、国内交通を鉄道網に頼らざるを得なかったからだ。1950年代には高速道路の整備や航空路線の定期運行が始まったものの、当時は鉄道を脅かすまでには至っていなかった。

