缶酎ハイとスナック菓子という何気ない組み合わせにも情緒がある
お酒はいつ飲んでもいいものだが、昼から飲むお酒にはまた格別の味わいがある――。ライター・作家の大竹聡氏が、昼飲みの魅力と醍醐味を綴る連載コラム「昼酒御免!」。連載第20回は、北九州・門司港の角打ちでノスタルジックな気分へと導かれた。【連載第20回】
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昼間から酒を飲んで、ご機嫌な午後を過ごしたい。そんなお酒好きの方々にお送りするこの「昼酒御免!」。連載開始からコツコツと街を歩き、飲んで楽しく食べておいしい、絶好の昼酒スポットを訪ねてきました。
今回はその20回目。角打ちの本場、北九州で昼酒してまいりました。
出かけたのは、北九州のはずれ、というよりここが九州の玄関口と言える門司港だ。初めてこの地を歩いたのはもう25年以上前。旅雑誌で明治期に繫栄した港町を巡る取材に出たときのことだ。まずは厳冬期の小樽の街を歩き、雪の坂道で転げ落ちそうになったり、老舗の寿司屋で絶品の寿司と燗酒に巡り合ったり、北の港街の真冬を堪能した後、千歳から空路福岡へ入った。
博多から小倉まで在来線特急に乗り、小倉からは門司港行きのローカル線に乗り換えて、ようやくたどり着いたのが門司港だった。私はそれまで門司という地名は知っていたが、JRに門司駅と、門司港駅があることを知らなかった。
趣きある駅舎は鉄道ファンでなくとも1度は訪れてみたい
門司港には明治期、船舶会社や商社、銀行、大企業の支店が次々に設立されている。鉄道においては、九州鉄道の始発駅は、博多ではなく、門司港である。明治大正期、門司港は、九州きっての大商業都市、貿易の街であり、外国からもたらされるハイカラな文化の香り高い先進の街だったという。
その時代の建造物を活かし、あるいは再現して、往年の門司港を観光地として蘇らせたのが「門司港レトロ」とよばれる街区だ。横浜の「みなとみらい」のように、往年の建造物と現代の建造物が街の景色を構成し、一歩裏へ入ると、そこは、大勢の人で賑わった時代の面影を残す大商店街だったりした。

