欧米の大学受験は高校の成績重視
さて、この推薦入試のみでの選抜は、欧米の大学入試そのものだ。イギリス、カナダ、オーストラリアなどの大学入試は、基本、高校の成績で決まる。
アメリカの大学入試の場合、高校の成績重視だが、アイビーリーグなどの最難関になると、「オール5」の高校生が大量に出願してくるため、共通学力テストのSATのスコアやエッセイ、活動実績なども合否判断の材料となる。
日本で“非認知能力ビジネス”にチャンスを見いだしている業者が「アメリカの大学では学力テストSATが廃止されている。世界的に見ても大学入試では学力以外の非認知能力が重視されるようになっている」とポジショントークを繰り広げているが、これは事実とは違う。
コロナ禍で共通学力テストSATが会場閉鎖で実施できなくなり、大学入試からSATのスコアが評価の対象から外されただけだ。しかし、現在はアイビーリーグなどの最難関大学の入試を中心にSATのスコアの評価が復活してきている。
ようは学力テストSATのスコアを評価した方が、優秀な学生をとれると大学が判断しているということだ。
活動実績が優れていたら、SATのスコアが微妙でも通ることもあるが、それはごく少数派だ。アメリカの最難関大学の入試は高校の成績とSATのスコアで合否が決まっていく。
「お金持ちの生徒を優遇している」とのSNSで批判
一方で、東大の新学部のカレッジ・オブ・デザインはどうなるのか。カレッジ・オブ・デザインの入試でSNS上の一部ユーザーが反発したのは、「学力以外の部分が重視される入試」に見えたからではないか。
特にRoute Bでは国際バカロレアや国際Aレベルのスコア提出が認められるが、これらは特定の国際的な認定カリキュラムを修了した学生のみが受験できる。
国際Aレベルを受けるためには、ケンブリッジ国際認定校を修了することが条件となる。グローバル教育に舵を切った東京女学館が、日本の女子校として初めてケンブリッジ認定校になったことも話題だ。
元々、グローバル教育は新興校がブランディングのために打ち出すものだったので、東京女学館のような伝統ある女子校がグローバル教育を打ち出すことは注目に値する。これらの私立中高一貫校がグローバル教育の強化をPRしているため、一部のSNSユーザーは「金持ちの子を入学させるための新学部じゃないか」と反発したのだろう。
これに対して高校側は学力が求められていることはわかっているようで、東大が開催したオンライン説明会では「既存の東大の学校推薦型選抜は共通テストで8割を得点することを求めるが、カレッジ・オブ・デザインは何割が求められるのか」という質問が出ていた。
Route Aは共通テストでどの程度の得点が求められるのかで、入試の方向性が分かるところだ。11月末には、共通テストで概ね80%以上を求めると発表された。Route Aでそれだけの水準を求めるということは、Route Bも同レベルの基礎学力が必要であろう。基礎学力をしっかりと見る方向性であることが推測される。
今回は東大の新学部カレッジ・オブ・デザインについて、ネットでの「金持ちの子を入学させるための新学部じゃないか」という反発について、それが事実なのかについて考察をした。次回でも、この入試が「お金持ち私立校」の生徒にどの程度、有利かについて言及したい。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(ともに青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも更新中。