いわば虚名をも保護します(なお、犯罪や政治家などの公共性の高い事項については別)。この点、死者の場合は虚偽の事実を公然と述べることが必要です。その限りにおいては、名誉毀損罪が成立する範囲は狭くなっています。
名誉毀損は親告罪ですが、被害者はすでに死亡しているため、配偶者や直系親族(親や子供など)、または兄弟が告訴できます。そこでSNSの内容が虚偽と証明できるときは、これら告訴権者が刑事告訴できます。一方、名誉毀損により被った損害の回復に向け、民事では慰謝料や謝罪広告を請求することになります。ただ、名誉毀損は人の人格権への侵害として不法行為になるのですが、被害者が死亡の場合、保護されるべき人格権は消滅するので、損害賠償請求はできないと解されています。
しかし、遺族が名誉毀損により、死者に対する特別な敬愛追慕の情を傷つけられたことになる場合は、遺族自身の人格権を侵害するものとして慰謝料請求が認められる余地があります。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2026年1月30日号