現場に“丸投げ”ではないか
エッセイストで、小学校英語指導者資格を持ち、教育や子育ての情報発信もしている藤井セイラさんはこう語る。
「一定の到達度に達した上で、ファシリテート(司会進行)に熟練した講師が各班につけばグループワークは効果的でしょう。でも、ただ『話しましょう』といわれても、先生の顔色をうかがう子、話せない子もいます」
そして、こうも話す。
「国立大の附属学校など実験校でうまくいった『協働的な学び』を、そのまま全国展開するのは難しいのではないでしょうか。先生方は授業を導くための訓練を受けられているのか、子どもたちの基礎学力の定着が疎かにならないか、心配です」
これは他の取材先でも耳にする意見だ。難関大の教授も同じことをいっていた。その教授の子どもは、名門の国立附属小学校に通っていた。小学校受験もハードルが高く、幼児教室に通わせた。
「小学校入試は抽選だと思っていたのですが、実際にはしっかりと試験がありました。文章を音声で聞かせて、その内容についての問いに答えるという試験があるのですがこの文章が驚くほど長い。大人でもちゃんと聞いてないと答えられないですよ。小学校入試で学力を問うので、入ってくる児童たちはセレクトされています。そのうえ、入学後、すぐに塾に通わせるご家庭も多かったですね。そういう学力層が高い児童が集まる国立附属で成功した授業方法を全国の公立小学校でやらせるなら、本来は、国がしっかりとやり方を提示しないといけないわけですが、実際には現場に“丸投げ”ですからね」
一方で、ある公立小学校の教師はいう。
「“丸投げ”というとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、現場で調整ができるという利点もあります。うちの小学校はまず講義式の授業で児童に知識や技能をインプットします。宿題で復習させ、ペーパーテストでちゃんと解けるかを見ます。このやり方なのでペーパーテストの平均点は変化ありませんし、学力低下は起きていません」
このように講義式の授業を中心にし、グループワークの時間は短いという調整をしている小学校の場合、「落ちこぼれる」児童が出にくいため、学力の平均値は下がらない。
公立校で基礎学力を身につけ、読み書き計算ができるようになるという日本の教育の長所は「新しい教育の推進」によって失われつつあるのかもしれない。
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【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも日々更新中。