生放送でカンフーを披露する宇樹科技の人型ロボット(CCTVより)
国家による人型ロボット産業振興への強い意思
春節聯歓晩会に話を戻せば、今回登場したロボットは宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)の「武BOT」に加え、バックダンサーとして歌に合わせて踊った魔法原子、2つの胡桃を片手で握り、器用にクルクルとまわして遊ぶ「胡桃回し」をしたり、衣服を畳んだり、ソーセージを串に刺したりして実用性を強調した銀河通用や、家庭劇コントに登場して人との対話能力を強調した松延動力のロボットが、それぞれ違った側面から最新の人型ロボットの性能を表現して見せた。
中国本土マスコミ情報によれば、16日24時時点で春節聯歓晩会のライブ配信を実施したメディアの累計ユーザー数は6億7700万人に及ぶ。国営中央テレビ局が主催し、極めて多くの人々が視聴する番組での実演は、知名度を高めるのに役立ち、営業活動や資金調達活動に絶大な効果をもたらす。
生放送での失敗は許されない。一方で、極限までに製品のイメージを高めなければならないといった目標がある。それぞれのパフォーマンスにはかなり誇張があるといった見方もある。人型ロボットは完全に独立して作動しているのではなく、背後でコントロールしているのではないかと疑う意見も多い。専門家たちによれば、少なくとも、今回のパフォーマンスに対して、一体毎に相当の時間をかけて訓練したのは確かなようだ。つまり、頭脳に当たる部分の能力について、メタバースによる訓練だけでは限界がある。データの蓄積を含めフィジカルAIの強化が必要だ。
また、たとえば家事(料理)を行う人型ロボットを実用化するためには、家族の健康状態、直近の栄養摂取状態、味の好みをしっかりと把握しておくこと、事前に冷蔵庫にストックされた食材の種類、鮮度、量をチェックしておき、足らない食材を適宜補充しておくこと、その上で自ら献立を考えるといった柔軟で複雑な思考が必要だろうが、それにはAIエージェントの分野で更なる進化が必要だ。
今回の人型ロボットのパフォーマンス紹介に関して、国家による人型ロボット産業振興への強い意思を感じる投資家は多いだろう。ベンチャーキャピタル、各種ベンチャーファンド、エンジェル投資家からの資金拠出を促し、IPOに対する需要を掘り起こすことなどに関して、大きな効果があるだろう。
宇樹科技は中信証券を主幹事としてA株上場を計画しているようだ。株式市場ではロボット関連銘柄への継続的な資金流入が期待できそうだ。
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文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。
