慢性的な膝の痛みに悩む患者は多い(イメージ)
国民病ともいわれる慢性的な膝の痛みに悩まされるのは高齢者だけではなく働き盛りにも少なくないが、原因となる膝軟骨の損傷は放置すると患部が徐々に拡大する。軟骨の再生医療は大掛かりな手術になることもあり、軽度のうちに治療することが重要だが、患者の負担が少ない治療法研究の最前線とは──。シリーズ「医心伝身プラス 名医からのアドバイス」、軟骨損傷に対する組織再生治療を長年研究してきた北海道大学病院整形外科・岩崎倫政教授が解説する。【膝痛治療の最前線・前編】
ケガやスポーツによる膝軟骨損傷の治療法
慢性的な膝の痛みに悩む方は多く、先進国では成人の約20%が膝の痛みや運動機能障害を抱えているといわれるほどです。高齢者に多い、膝軟骨がすり減って痛みが生じる「変形性膝関節症」以外にも、外部からの強い衝撃によって生じる「外傷性軟骨欠損症」や、スポーツなどで軟骨に繰り返し力が加わることで起こる「離断性骨軟骨炎」などでも膝の痛みが生じます。軟骨が欠損すると痛みを感じるだけでなく、放置すると損傷範囲が広がり、周囲の軟骨に変性が広がっていきます。そのため、損傷が軽度のうちに治療することが極めて重要です。
軟骨は一度損傷すると自然には修復しにくいため、保存的治療で症状が改善しない場合などは手術的治療が考慮されます。ケガやスポーツなどによる膝軟骨損傷の治療法としては、「骨髄刺激法(マイクロフラクチャー)」「自家骨軟骨柱移植術」「自家培養軟骨移植術」が行なわれています。
骨髄刺激法は、損傷を起こした軟骨下にある骨に小さな穴をあけて骨髄からの出血を促します。骨髄には軟骨細胞へ分化できる「幹細胞」と呼ばれる細胞が含まれているため、それを誘導することで軟骨を再生させることを目的とした治療です。関節鏡を用いて小さな傷からアプローチするため、患者さんの負担は少ないのですが、時間が経つと軟骨が変性する可能性もあります。
自家骨軟骨柱移植術は、膝軟骨の損傷していない場所から軟骨を採取して損傷した軟骨に移植する治療です。これは正常な軟骨を採取しなければならないため、広い範囲の損傷では対応しくにいことが難点でした。
自家培養軟骨移植術は、膝の関節を切開して正常な軟骨を採取・培養して細胞を増やし、ゼリー状の培養軟骨を作ってから、再度手術によって軟骨損傷の部分に移植する治療です。2回手術が必要ですが、主として広範囲の損傷に対して行なわれています。
