15%分を払おうとすると「NO!」
海外旅行の楽しみなんて、食事が多くの割合を占めるわけです。そこで毎度チップ問題に直面する。かつてアメリカに在住していた頃、私の父は、本当に親切だった店員に対して、15%のチップを払っていました。1980年代後半~1990年代前半の話です。
当時は時給が4ドル85セントで620円程度だった時代です。1時間半、我々に給仕をしてくれた店員に対し、合計120ドルの食事だった場合、15%で18ドルのチップを父は払っていた。父は常々「この人たちの時給は安い。経営者はチップが入ることを前提に安い時給を設定しているから、チップを払うのは当然だ」と言い、15%のチップをテーブルに置いていました。
その頃の私の“チップ事情”といえば、アメリカ人の高校同級生たち5人組でよくピザチェーンに行っていて、そこでは1人4ドル59セントの食べ放題ピザを頼み、5人の合計は22ドル95セント。高校生だからそんなにチップを置かなくてもよかろうと、1人クオーター(25セントコイン)、合計1ドル25セントのチップを払っていました。これは総額あたりに換算すると5%という計算です。
さて、現在のアメリカですが、物価上昇に合わせて賃金も上がっているわけですが、そこにくわえてチップも“値上がり”して、20%を“要求”されるようになっている。実際に最近アメリカに行った人の話を聞くと、15%分を払おうとすると店員から「NO!(足りない!)」を突きつけられたり、「20%は当たり前ですよね?(ニッコリ)」という態度を示されると言います。
正直、貧乏国家からやってきた我々日本人からすれば「勘弁してくれよ」となる。円安+物価高のダブルパンチで、そもそものメニューを見て「高いなあ」と思いながらも注文して、さらに支払いの段階でチップまで! アメリカ旅行に行く人は、このトリプルパンチに耐えなければならないわけです。よほどのことがない限り、もう私がアメリカに行くのは無理です。それでも行きたいという人は、覚悟しておいてください。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は稲熊均氏との共著『ウソは真実の6倍の速さで拡散する』(中日新聞社)。