“使い分け”時代、自己紹介が難しくなった
若者の恋愛離れ、サークル離れ、酒離れなどと言われるが、実際に進んでいるのは、「時間とお金の若者離れ」である。
一部の前のめりな学生、経済的に恵まれた学生たちは、サークル、海外旅行や留学、インターンなどに没頭することができる。一方でごく普通の学生は、時間もお金もなく、学校と、アルバイト先と自宅の三角形を中心の生活を送っている。
一見するとパターン化された自己紹介は、企業が求める「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)という質問に答えるため、彼ら・彼女なりに、“平凡”な自分のアピールポイントを「言語化」すべく、精一杯考えたものなのだ。これを「はいはい、どこかでそう言えばウケると覚えてきたのね」などと覚めた目で見てはいけない。
一方で、Xではこういう自分を出し、TikTokではこういう自分を見せ……と、“多面的な自分”を出し先によって使い分けるのが当たり前の時代となった。そうした現代の若者の自己紹介は、一筋縄ではいきにくい。SNSのアカウントも複数あり、それぞれの自分を使いわける。SNSに限らず、場によって、自分のキャラを使い分ける時代である。その方が楽に生きることができるとも言えるが、様々なキャラを演じるがゆえに、この自己紹介はどうしようかと悩むこともある。
しかも、企業は新卒も中途も採用数を増やしている。特に中途入社強化は、これまでのバックグラウンドや、育ってきたカルチャーが異なる人が増えているということにほかならない。社内でも自己紹介の機会が増える。キャリアをいちいち説明すると、話がとっ散らかって面倒だ。もうとにかく、「自己紹介」が面倒くさい時代なのである。
■後編記事につづく:若者の間では性格診断「MBTI」が自己紹介の定番化…かつての「動物占い」ブームと何が違う? 令和の自己紹介がどんどん表面的なものになっていく事情
【プロフィール】
常見陽平(つねみ・ようへい)/1974年生まれ、北海道札幌市出身。1997年3月、一橋大学商学部卒業後、株式会社リクルート、株式会社バンダイ等を経て、2012年4月に一橋大学大学院社会学研究科修士課程に入学。修了後、2015年4月に千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任、2020年4月准教授、2025年基盤教育機構准教授、2026年教授となり現在に至る。大学で教鞭を執る傍ら評論家として活動し、40冊以上の書籍を発表。雇用・労働に関連した政府の委員を歴任。主な著書に『日本の就活』(岩波新書)、『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)、『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版)『50代上等!──理不尽なことは「週刊少年ジャンプ」から学んだ』(平凡社新書)など。