自分のポートフォリオを見返してゾッとした
正直、僕のような一般人が、GPIFと同じレベルの運用なんてできるわけがないと思っていました。しかし、実はGPIFの基本戦略、つまり「分散投資」の考え方は、私たちも真似できます。
たとえば、1つの企業ではなく複数の企業に分散する。日本だけでなく海外にも分散する。こうした基本的な配分を意識するだけで、GPIFと同じ発想で資産を守りながら増やせるのです。プロ中のプロが実践している「分散投資」の本質。まさに私たちが学ぶべきポイントでしょう。
後輩から投資の相談を受けるたびに、僕はドヤ顔でこう言っていました。「S&P500とかで広く分散しておけば間違いないよ」と。
投資の鉄則は「分散投資」です。それは十分わかっているつもりでした。しかし、ある日ふと自分のポートフォリオを見返して、ゾッとしました。
僕のポートフォリオはFANG+(ファングプラス:アメリカの巨大テック企業10社で構成される株価指数)のインデックスファンドを軸に、国内外の個別株やインド株のアクティブファンドを組み合わせた“自家製オルカン”です。
たしかに広く分散はできているものの、よく見るとその多くが景気の良いときに伸びるグロース株(成長株)ばかりでした。つまり、もし世界経済が不景気になったら、大損害になってしまう。そう、僕の「分散」は、一歩引いてみると「偏り」だったと悟りました。
そこで僕が「守りの資産」として目をつけたのが、金(ゴールド)でした。
金は、株式市場が不安定なときや株価が急落した局面、さらには地政学リスクが高まる有事に買われやすい、安全資産の代表格です。世界中で価値が認められ、実物資産として存在するため、インフレや紛争などの不確実性が高まる局面では資金が流入しやすい特性があります。つまり、株価が下落する局面で逆方向に動きやすい、分散投資に有効な資産と言えます。
「金に投資すれば、分散投資が完成するじゃん!」
僕のその考えは本当に理にかなっているのか。これもファンドアナリストの篠田(尚子)さんに相談させてもらったことがあります。リーマン・ショック後からコロナ前まで、世界的に景気拡大の時期が長く続きました。篠田さんによればその結果、多くの投資家が「好景気に強い資産」ばかりを持つようになり、景気が悪化したときに備える「守り」を忘れてしまっていると言います。
恥ずかしながら、僕のポートフォリオは、まさにその典型だったわけです(笑)。
「雨の日」に強い資産とは?
ここで知ったのが「オールウェザー(全天候)型ポートフォリオ」という考え方です。文字通り、どんな天候(経済局面)でも対応できるように、景気が良い「晴れの日」に強い資産と、景気が悪い「雨の日」に強い資産をバランスよく持つ。そうすることで、どんな相場になっても資産全体が支え合えるようになります。
バランスを取るには、まず自分のポートフォリオをしっかり把握しないといけません。そこで篠田さんがおすすめしてくれたやり方は非常にシンプルでした。一度、自分の資産を「景気が良いときに強いか、悪いときに強いか」で分けて書き出してみるということ。
僕の資産といえば、あらためて見るまでもありません。完璧な「晴れの日仕様」に振り切っています。もし“天気”が崩れれば、激しい雨風をまともに浴びて震えることになるでしょう。しかもただ嵐が去るのを待つことしかできません。
景気が悪いとき(雨の日)に強い資産の代表が、金(ゴールド)です。実際、リーマン・ショック後の2008年から2011年にかけて、世界の株式市場が混乱するなか、金価格は約2 倍に上昇しました。
株式市場が暴落するような局面では、投資家たちが安全資産として金を買う傾向があります。こうした特性から、金はポートフォリオ全体の「守り」を固める資産として機能します。
金以外にも、景気後退局面で相対的に強さを発揮する資産があります。
まず挙げられるのがバリュー株(割安株)です。バリュー株とは、企業の本来の価値に対して株価が割安に放置されている銘柄のこと。派手さはないものの、収益基盤が安定している企業が多く、電力・ガスなどのインフラ企業、地方銀行、長年にわたり高い配当を維持してきた銘柄が代表例です。
また、ディフェンシブ株も不景気に強いカテゴリーです。医薬品、食品、日用品といった「生活必需品」を扱う企業は、景気が悪化しても需要が大きく落ち込まないため、売上が比較的安定しやすい。結果として、景気後退期でも株価の下落幅が小さくなる傾向があります。
個別のディフェンシブ株を選ぶこともできるほか、複数の銘柄にまとめて投資できる投資信託やETF(上場投資信託)を使う方法もあります。個別の銘柄選びに迷う人や、資金を一度に多く割けない人にとっては、こうしたファンドを活用するほうが効率的で、分散効果も得られます。