「攻め」にもなる金(ゴールド)投資
当たり前ですが、金も無敵というわけではありません。むしろ、金利上昇局面では弱点があらわになります。完全なる「安全資産」ではないのです。金には篠田さんも指摘する「資産としての構造的な弱点」があります。
そもそも金そのものは、利息を生まない資産です。銀行預金のように利子がつくわけでも、株のように配当がもらえるわけでもありません。その価値は、純粋に「値動き」だけで変わります。
そのため、金利が上昇する局面では、相対的に金の魅力は低下します。投資家からすれば、「持っているだけで利息がつく預金や債券」のほうが、安定した収入源として合理的な選択肢になるからです。「金だから安全だ」と思考停止で保有し続けるのは、かえってリスクを招きかねません。
しかし、話はそこで終わりません。篠田さんによれば、世界各地で紛争が続くような不透明な局面では、金利の理屈とは別のロジックが働くそうです。いわば、不確実な時代における「金の豹変」です。
景気不安や金利の上昇が重なれば、株式も債券も同時に値を下げてしまうことがあります。投資先がどこにも見当たらないような状況で資金が最後に流れ込む場所。それが「絶対的な価値」を持つ金なのです。マーケット全体が落ち込むなかで、金だけがひとり勝ちを見せる。その結果、ポートフォリオ全体のリターンを押し上げる。
そう、「守り」のはずの金が、時に「攻め」の資産に変わるというのです。つまり、金は典型的なリスクヘッジ(守り)の資産である一方、「株も債券も弱い局面で、ひとり勝ちする」という特性を持っている。
これは僕にとってまさに新しい視点でした。これまで「守り一辺倒」だと思っていた金が、実は状況次第で2つの顔を使い分ける資産だったのです。
要するに、
・金利上昇時:相対的に債券の魅力が増すため金は不利(競争に負ける)
・ 地政学リスク時:“資金の避難先”として金が買われ、むしろ有利になる(需要が高まる)
この両面を理解しておけば、金をポートフォリオに組み込む理由はずっと明確になります。とくに今のように世界の不確実性が高い時代では、金は“守り”のためだけでなく、“攻め”の選択肢としても検討する価値がある資産だと言えるでしょう。
実は一度、金のETFを買ってみたことがあります。しかし、全然しっくりこなくて、すぐに手放してしまいました。このときの金投資が続かなかった理由を考えてみると、1つの答えに行き着きました。
「手触り感がなかった」のです。
当時、「金を買ってみよう」と思い立って調べてみると、投資信託、ETF、現物などいくつも選択肢があり、僕はなんとなく手軽なETF を選びました。
手軽ではあったものの、いざアプリを開いてグラフを眺めても、どうにも“資産を持っている実感”が湧いてきません。ETF はあくまで金価格に連動する金融商品であって、画面の数字が上下しているだけ。私たち個人投資家がその金庫から金の延べ棒を引き出せる
わけではありません。
僕にとって金のETFは、株価チャートを見ているのと心理的にはほとんど変わらなかったのです。実体のある資産としての“重さ”や“存在感”がつかめず、どこか現実離れした投資に感じてしまった。それが続かなかった最大の理由でした。
僕が推しているFANG+ のインデックスファンドやTesla(テスラ)の株式にも、金のETFと同様に手触り感はありません。けれど、僕にとっては「成長」に賭ける“攻めの投資”。テクノロジー企業のニュースは日々報道されるので、「お、この会社、また新しいことを始めたな」と動きを追うだけでもおもしろい。株価の上下すら、いわば“ゲームのスコア”のように楽しめるのです。
一方で、金のような守りの安全資産については、どうしても“そこにある”という手触り感を求めてしまう。もし何かあっても、「これだけは残る」と直感的に感じられる安心感がほしいと思ってしまう。なかなか理解してもらえないと思いますが、僕はそんな面倒くさい性格なのです(笑)。