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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方
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「どう考えてもおかしい」消費者がガソリン値上がりで苦しんでいる時に、石油元売り会社は「原油高+補助金」で二重に利益 市場を歪める「ガソリン補助金」の無責任

ガソリン補助金は誰のため?(イラスト/井川泰年)

ガソリン補助金は誰のため?(イラスト/井川泰年)

 中東情勢の混乱に伴う原油価格高騰を受け、ガソリン価格も値上がりしている。政府はその対策として「ガソリン補助金」を支給しているが、この補助金は本当に消費者のためになっているのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、ガソリン補助金の仕組みを紐解いたうえで、その問題点を指摘する。

二重に利益を得ている石油元売り会社

 全国平均のレギュラーガソリン価格が1リットル=170円前後で推移している(本稿執筆時点)。“高止まり”とも言われるが、実は世界的に見ると、日本のガソリン価格はかなり安い。

「Trading Economics」の統計によれば、今年4月のガソリン価格は、日本が1リットル=1.06ドルで、アメリカが1.08ドル、中国が1.1ドル、韓国とメキシコが1.36ドル、イギリスが2.13ドル、フランスが2.4ドル、ドイツが2.51ドル、シンガポールが3.39ドルだ。日本より安いのはインドネシア(0.58ドル)、サウジアラビア(0.62ドル)、ロシア(0.81ドル)などの限られた産油国ぐらいなのである。

 日本の価格が安いのは、政府が170円に抑えることを目標に「ガソリン補助金」(燃料油価格激変緩和補助金)を石油元売り会社に支給しているからだが、ロシアがウクライナに侵攻する前の2022年1月から始まったガソリン補助金について、私は本連載で何度も批判してきた。この補助金は石油・ガソリン関連市場を歪める上、石油元売り会社が補助金で儲けているのは間違いないからだ。

 その証拠に、たとえばENEOSは賃金を組合員平均で2024年4月から7.9%、2025年4月から8.2%引き上げ、コスモエネルギーホールディングスも2023年4月から8%引き上げた。いずれも過去最高の賃上げ率だったと報じられている。

 石油元売り会社は石油備蓄法により70日分(現在は55日分)の石油備蓄が義務付けられている。このため原油価格の上昇局面では、価格が安い時に仕入れた原油の影響で在庫評価が上がり、売り上げ原価が安くなって利益が増える。原油価格の下落局面では、その逆になる。ガソリンは原油価格が高くなったら高くなり、安くなったら安くなるが、それは石油元売り会社の利益構造と正反対の関係になっているのだ。

 原油価格はロシアがウクライナに侵攻した際に急騰し、その後は下落に転じた。現在はイラン戦争によるホルムズ海峡の封鎖で再び上昇しているが、原油価格が下がっても、石油元売り会社が自分たちの利益を確保した上で特約店や卸業者にガソリンを供給しているため、ガソリンの小売価格はさほど下がらないのである。

 要するに、石油元売り会社は原油価格が上昇したほうが儲かり、その局面で国がガソリン補助金を給付しているから、二重に利益を得ているのだ。それゆえ賃金を大幅に引き上げることができたのである。

 消費者がガソリンの値上がりに苦しんでいる時に、石油元売り会社はガソリン補助金=税金で利益を確保し、安定経営を維持しているわけで、これはどう考えてもおかしい。補助金を出すなら元売り会社ではなく、運送業の事業者や車で通勤している人などの消費者を対象にすべきである。

 石油と構造が似ているのは「コメ」だ。

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