電線大手「フジクラ」本社(写真:時事通信フォト)
AIデータセンター需要を追い風に、フジクラ(東証プライム・5803)の2026年3月期決算は売上高・各利益とも過去最高を更新した。それでも株価は決算発表後にストップ安まで売り込まれた。「フジクラショック」と言われるほど、市場に大きなインパクトを与えたが、何が市場の失望を招いたのか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
過去最高益を更新しながらストップ安
生成AIの台頭により、膨大なデータ処理を担うハイパースケール・データセンターの建設ラッシュが世界中で起きている。この潮流において、初期の主役はGPU等の演算処理チップを手掛ける半導体メーカーであったが、やがて市場の資金はデータセンターを実稼働させるためのインフラストラクチャー、すなわち電力設備、冷却システム、そして「通信回線」へと波及した。データセンター内部でのサーバー間通信や、データセンター同士を繋ぐネットワークにおいて、大容量かつ低遅延のデータ転送を実現する光ファイバケーブルは、AIインフラにおける大動脈といえる。この分野で世界的な競争力を持ち、極細径・高密度光ファイバケーブルや光ファイバ融着接続機において圧倒的なシェアを握る企業群は、株価を右肩上がりに上昇させてきた。
しかし、期待値が織り込まれた状態において、企業が提示する新年度のガイダンスがわずかでも市場コンセンサスを下回った場合、株価は暴落を見せることが多い。その例となったのが、「電線御三家」の一角にして情報通信ケーブル大手のフジクラである。
今回は、直近決算において全利益段階で過去最高益を更新しながらも、一転してストップ安となったフジクラの決算内容を解剖する。決算で発表された数字はもちろん、企業IRの行間を読み解き、同社の今後の展開を考えていきたい。
フジクラの決算ハイライト
5月14日の取引時間中に発表されたフジクラの2026年3月期の本決算は、業績としては文句のつけようがない内容であった。売上高は前年比20.7%増の1兆1823億5800万円と、同社創業以来初となる1兆円の大台を突破した。本業の稼ぎを示す営業利益は前年比39.2%増の1887億700万円、経常利益は同45.4%増の1994億8100万円、そして最終的なボトムラインである親会社株主に帰属する当期純利益は同72.5%増の1571億6300万円に着地と、すべての利益段階で過去最高を大幅に更新する実績を示した。
この業績成長を牽引したのは、言うまでもなく情報通信事業だ。北米を中心としたAIデータセンターの需要が爆発的に拡大し、同部門単体で売上高は前年度比44.7%増の6530億円、営業利益は同65.7%増の1527億円と、全社営業利益の8割超を稼ぎ出した。
フジクラの競争力の源泉は、独自の高密度光ファイバケーブル技術「SWR(Spider Web Ribbon)」および「WTC(Wrapping Tube Cable)」にある。データセンターの地下ダクトはすでにケーブルで飽和状態にあり、限られたスペースにいかに多くの光ファイバを通すかがハイパースケーラー(巨大IT企業)の喫緊の課題となっている。フジクラの製品は従来比で圧倒的な細径化と高密度化を実現しており、実質的な業界標準として指名買いを受けている状態だ。
