電線大手「フジクラ」本社(写真:時事通信フォト)
中東情勢の悪化による市場の混乱も落ち着きを取り戻しつつあり、株式市場は上昇をみせている。最も注目されるテーマは「AI」だが、AI開発競争において重要な要素のひとつが、「電力」と「通信ネットワーク」という物理的なインフラだ。そうしたなか、市場の注目度が高い「電線御三家」銘柄について、個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が、直近の決算発表を踏まえて解説する。
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世界のテクノロジー企業が直面した最大の障壁
マーケットに携わっていく投資初心者の方の中でも「電線御三家」という言葉を耳にすることが増えているだろう。今回はこの「電線御三家」についての情報整理をし、今後の展望を考えていきたい。
2026年現在の東京株式市場において、世界的なメガトレンドとして最も熱を帯びている投資テーマが「AI(人工知能)」であることは疑いようがない。しかし、その大きな恩恵を享受しているのは、もはや最先端のソフトウェア企業や、高性能な画像処理半導体(GPU)を設計・製造する半導体メーカーだけではない。生成AIの爆発的な普及と高度化に伴い、膨大な計算処理を担う巨大なデータセンターの建設ラッシュが世界規模で巻き起こっている。そこで世界のテクノロジー企業が直面した最大の障壁が、「電力」と「通信ネットワーク」という物理的なインフラのボトルネックであった。
AIを稼働させるためのハイパースケール・データセンターは、従来型の施設とは比較にならないほど途方もない量の電力を消費する。同時に、サーバー間やデータセンター間で、数十億、数千億というパラメータを持つAIモデルの学習・推論データを遅延なく超高速で伝送しなければならない。そこで不可欠となるのが、電流のロスを防ぐ高品質な高圧電力ケーブルと、限られたスペースに膨大な光回線を敷設できる超高密度の多心光ファイバケーブルである。
ゴールドラッシュ時代に最も確実に利益を上げたのは、金を掘った者ではなく「ツルハシとジーンズ」を売った者たちだったと言われている。現代のAI開発競争における「最強のツルハシ」を提供し、この物理インフラの根幹を底辺から支えているのが、日本の「電線御三家」と呼ばれるフジクラ、住友電気工業、古河電気工業の3社である。
かつては景気敏感なオールドエコノミーの代表格と見なされていた「電線御三家」だが、独自の卓越した素材開発力と高度な製造技術によって、今や世界のAIインフラを支える「AI御三家」として株式市場を力強く牽引する存在へと変貌を遂げている。
今回は、このAI特需の最前線に立ち、日本市場の新たな主役となった主要銘柄について、直近の決算数値に基づく前年成長、市場からの評価を示す各種経営指標、そして今後の指針となる中期経営計画に触れながら、今後の展望を分析していきたい。(※株価指数は5月14日終値で算出)
