さらなる成長が予想される中国の半導体産業(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。関連記事《ファーウェイが「ムーアの法則」の限界を突破できた理由 今秋には線幅3nm並みのスマホ用半導体「麒麟2026」を量産》を踏まえて、華為技術(ファーウェイ)が開発した半導体製造の新技術“Logic Folding”の実用化に欠かせない中国株の個別銘柄について解説する。
目次
他の大手半導体メーカーがキャッチアップするのが難しい理由
「細密加工技術の進化により、半導体チップ上のトランジスタの集積度は1年半から2年ごとに2倍になる」といった「ムーアの法則」が限界に近付いていることに対して、学会レベルでは2010年代には既に意識されていた。TSMCや大手半導体メーカーも限界にとらわれない製造方法の模索、基礎的研究を早くから続けていたようだ。今回、華為技術が開発した“Logic Folding”といった手法は決して目新しいものではない。TSMCをはじめ、先行する大手半導体メーカーがキャッチアップするのは難しくないのではないかといった見方もあるかもしれない。しかし、それは簡単ではない。
まず、“Logic Folding”技術だが、設計段階から回路を立体的に再配置しなければならない。システム全体で時定数(τ)を最適化するような設計を目指すことになるが、これには従来の2D前提の設計とは全く異なる発想が必要だ。3Dレイアウト、層間を跨ぐ超高密度配線の最適化機能、発熱、信号遅延などを解析する機能などEDAツールの大規模な再構築が必要となる。
トランジスタを垂直に重ねると、熱蓄積、漏れ電流の影響が深刻となることから、複雑な熱力学、電磁気学的な挙動を正確に予想する必要が出てくるが、そのための物理モデルを構築しなければならない。また、異なるメーカーが作ったチップ、メモリを縦に積み上げて使う際には、インターフェース、プロトコルの統一が必要となる。さらに、“どれだけ速いか”の測定をするためのベンチマークを再定義しなければならない。
つまり、“Logic Folding”を実現するためには、設計ツールの変更、物理法則のモデル化、接続規格の作成、性能評価基準の確立といった一連のエコシステムを丸ごと作り替える必要がある。
今年の秋に「麒麟2026」搭載スマホ「Mate90」を発売予定
華為技術は6年前からこの技術を用いて、光通信、デジタル通信、無線、5G、スマートフォン、自動運転、「クンペン」「アセンド」を含む汎用計算、AI計算など、幅広い領域で381種類の半導体チップを製造してきた実績がある。この間、必要となるエコシステムを一から作り上げており、データの蓄積、学習効果(取得したノウハウ)は大きい。
実際の製造を担当するのはSMIC(00981、香港上場)であるが、こちらもほぼ華為技術と同じ時期に、超細密加工には欠かせないEUV露光装置の輸入を絶たれるなど、米国から制裁を受けている。そうした中で、多重露光など革新的な方法で既存のDUV露光装置を工夫して使い、線幅7nm、5nm相当の半導体の量産技術を身に着けているが、この技術が“Logic Folding”を実現させるための重要な製造基盤となっている。また、“Logic Folding”の基礎研究については2015年から始めている。2026年には「先進パッケージング研究院」を設立しており、さらに「芯三維」を立ち上げて専用の生産工場を設けている。
華為技術は今年の秋、初代TSMC製線幅3nm半導体に極めて近い性能の「麒麟2026」を搭載したスマホ「Mate90」を発売する予定だ。スマホは毎年、新商品が発売されるがその都度、半導体をバージョンアップする計画で、2031年完成予定の「麒麟2031」では、1.4nm半導体相当の性能を引き出すと公言している。
