中国系AIが急速に普及している背景とは(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。グローバル規模で利用者が急増している中国系AIの現状と、その優位性についてレポートする。
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2026年に入り、世界で中国系LLM(大規模言語モデル)の利用が急速に増えているようだ。米国のスタートアップ企業「Open Router」は、主要ベンダー300超のLLM、マルチモーダルモデルをまとめて扱うことのできる統一インターフェイス型プラットフォームを提供している。多くの研究者が慣れ親しんでいるOpenAIのSDK(AI用ソフトウエア開発キット)が使用できて、APIキー(認証情報)さえ取得していれば、一つのエンドポイントで、モデル名の指定を変えるだけで、任意のモデルを呼び出せる画期的なサービスを提供している。
300超のモデルには無料、有料いずれのモデルも登録されているが、有料モデルを使った場合でも、サブスクリプションではなく、クレジットをチャージしておき、使った分だけを払う仕組みとなっている。コスト管理がしやすいため、企業のAI開発者や研究者などの間で高い人気があり、米国を中心に500万人以上のユーザーを獲得している。
この「Open Router」は使用されたモデルのランキングを発表しているが、4月5日までの週のトップ5は順に、アリババグループの「QWEN3.6Plus」(無料)、「DeepSeek V3.2」、アンソロピックの「Claude Opus 4.6」、ミニマックスの「MiniMax M2.7」、「Claude Sonnet4.6」となっておりこの内、アリババグループ、DeepSeek、ミニマックスは中国企業である。トークン数での比較データをみると、昨年末までは米系が主流であったが、今年に入り中国系の躍進が目立つ。
その背景として、今年に入り、AIエージェントを管理するためのゲートウェイとなる「OpenClaw」が爆発的な人気を博したことが挙げられよう。OpenClawの登場で、企業はもちろんだが、意識の高い個人までもがAIエージェントを利用するようになった。AIエージェントは複数のLLM、マルチモーダルモデルをうまく組み合わせ、使い分けるといった構造となっている。ユーザーは、思想的な偏りが結果に影響したり、個人情報の漏洩のリスクが気になったりする部分は米系の有料AI(LLM、マルチモーダルモデルなど)を選ぶだろうが、そうではない大半の部分、たとえば企業の製品情報など限られた情報の範囲で答えを出すような作業に対してはできるだけ安いAIを選ぶのが合理的と考えているようだ。
