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ビジネス

なぜ東急が、カフェに顔認証を導入するのか? 「財布もスマホも出さずにコーヒーを受け取れる」実証実験の狙い

カフェで何を検証するのか

 この実証実験では、複数の検証が行われる。顔認証は回数券使用時の本人確認のために使われるので、従来のキャッシュレス決済の代替ではない。

 まず課題になるのが、利用者に快適な体験を提供できるかだ。同社は、日常的に利用する店舗サービス、とくに繰り返し利用する場面において、顔認証ならではの価値をより発揮できる可能性があると考えているという。

 サービスを利用するまでのステップの簡略化も重要だ。登録時の負担軽減もふくめ、より多くの利用者に「スムーズで快適な生活体験」を気軽に試してもらえれば、その利便性や受容性を正確に検証できる。

 新しいサービスの導入によって、利用者と店舗スタッフの間で新しいコミュニケーションが生まれる可能性もある。同社は「PARK COFFEEが大切にしている対面でのコミュニケーションや居心地のよさはそのままに、顔認証を介して生まれる新たなコミュニケーションも、お楽しみいただけるのではないかと考えました」と語る。

顔認証の説明をする店舗スタッフ(写真左)。写真提供:東急

顔認証の説明をする店舗スタッフ(写真左)。写真提供:東急

なぜ顔認証を選んだのか

 今回の実証実験では、日立製作所と東武鉄道が共同開発した生体認証サービス「SAKULaLa(サクララ)」を活用する。このサービスは、顔認証だけでなく指認証の機能もあり、すでに実用化されている。

 なぜ東急は「SAKULaLa(サクララ)」の顔認証を採用したのか。同社によると、それは利用者のアクセシビリティを重視した結果だそうだ。顔認証なら、スマートフォンのカメラを使って読み取れるので、指認証のように生体情報を読み取るための専用のハードウェアを前提としない。利用者は、サービス利用開始までの手続きを、自身が保有するデバイスを使ってオンラインで完結できる。

顔認証の成功を示す端末。画面右は、「SAKULaLa」の公式キャラクター。顔認識情報は、事前にスマートフォンで登録できる。写真提供:東急

顔認証の成功を示す端末。画面右は、「SAKULaLa」の公式キャラクター。顔認識情報は、事前にスマートフォンで登録できる。写真提供:東急

 いっぽう開発に携わった日立製作所によると、「SAKULaLa」の顔認証が使われるのは、東武鉄道宇都宮線の駅における定期券確認に続いて2例目だという。

 こうした動きは、たんに店舗利用のハードルを下げるだけでなく、日常の生活導線を活性化させる取り組みとして興味深い。顔認証の導入は、手ぶらでの購入体験を実現することで、ポケットからスマートフォンや財布を取り出す機会を減らして利便性を高め、新しい価値を創出する可能性がある。

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術解説者。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。

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