相続放棄のタイミングに要注意
また、受取人の名義以外にも着目すべき点がある。それは、息子が父の死亡を知って直ちに相続放棄の手続きを取った点だ。
相続放棄の手続きは、原則として「自分が相続人になったと知った時」から3か月以内に行わなければならない。もしこの期間を過ぎてしまうと、相続を承認したとみなされ、今回のケースであれば母親とともに2000万円の借金を引き継ぐことになっていた可能性がある。
さらに、よかれと思って形見分けとして高級時計や貴金属を持ち帰ったり、父親の口座からお金を引き出して使ったりすると、その時点で「相続を認めた(単純承認)」とみなされる恐れがある。息子が余計なことをせず、すぐに手続きを取ったのは賢明な判断であったと言える。
今回は奏功したが、実際の相続では注意点もある。例えば、相続放棄をしても生命保険金には税金がかかるケースがあるほか、自分が放棄したことで借金が他の親族(母親や父親の兄弟など)に回ってしまい、トラブルに発展することも考えられる。迂闊に自己判断せず、まずは弁護士や司法書士などに判断を仰ぐのが良いだろう。
【執筆】
佐伯竜(さえき・りゅう)/勤務司法書士(司法書士法人 黒崎事務所)。20年以上、宅建士・管理業務主任者・マンション管理士などの講師を務めている。ニュース記事などの執筆も多数。
【協力】
司法書士法人 黒崎事務所/1973年創業。東京都町田市に拠点を置き、町田・相模原エリアを中心にリーガルサービスを展開する司法書士法人。東京都下(多摩地域)では最大規模となる10名以上の司法書士が在籍する。50年以上の実績を持ち、個人の相続・遺言手続き、不動産登記から法人の会社登記まで幅広く手掛けている。