SNSで報告された「伝説の1201分待ち」(Xより)
1201分待ち!? ネット史に残る行列騒動
【かっぱ寿司が半額で1200分待ち騒動】
2021年9月26日、回転寿司チェーン・かっぱ寿司が1日限定で「全皿半額」キャンペーンを実施しました。そこに客が殺到し、入り口の予約タッチパネルでは「待ち時間」と「待っている組数」が表示されたのですが、Twitter(現・X)には仰天の「約1201分」「240組」を投稿するユーザーが!
1201分といえば、20時間なわけで、果たしてこの人たちは20時間後に店に来たのだろうか、といった疑問はありつつも「半額」の破壊力のすさまじさをかっぱ寿司は見せつけた格好です。
【ソフトバンクモバイルの「吉野家牛丼一杯無料」で大混乱】
2018年2月、ソフトバンクは契約者に「SUPER! FRIDAY」という企画を実施。この時は吉野家の牛丼一杯が無料になったのですが、ロードサイドの店舗近くには自動車の車列が、駅の店舗には大行列ができて、他の駅利用客の通行が妨げられるほどの騒動になりました。後に吉野家が「客や地域の皆様に多大な迷惑をかけた」と謝罪する羽目になりました。
【西友偽装牛肉返金事件】
2002年、スーパーチェーンの西友が国産の牛・豚として販売した肉が輸入品であることが内部からの指摘により明らかになりました。そこで、西友は「レシートなしで返金」を発表。すると、返金を求める人々が殺到。テレビの取材に対して「(レシートはないけど)3万~4万円は買った」などと答える人も。西友は「レシート不要」という性善説を打ち出したことで、本来の売上の約3倍の5000万円を支払う結果となったわけです。
なお、この時のニュース映像には、「この人たち、大量の肉を西友で買うのかしら?」的な人も混じっていた印象です。とにかく「『肉を買ったが騙された!』と西友に言えばお金がもらえる」ということで多くの人が集まった騒動です。
【銀座0.1カラットダイヤモンド無料配布で大混乱】
2009年6月、東京・銀座に店舗をかまえるフランスの宝石店「モーブッサン」で、先着5000人に0.1カラットのダイヤ(5000円相当)を無料で配布するキャンペーンを実施しました。この時、約1.5kmの行列ができ、約5000人が並びました。
本来は同店でダイヤを加工してもらうべく、ダイヤについてより深く説明して知ってもらおうという試みでしたが、ここまで行列ができると当然、短時間ではさばききれない。「誠意がねーんだよ!」などと怒号が飛び交う事態となり、整理券を渡して、後日あらためて来店してもらうようお願いする事態となりました。
ところが、「駐車場代がかかっている」だの、「有給休暇を取って来た」など、行列を作った人々の中から不満の声が噴出。ダイヤを加工してもらって売上を立てようという同店の目論見とは裏腹に、「5000円相当のダイヤがタダで手に入る」と考えた人が殺到したわけです。結果的に同社CEOは「もうこの手のキャンペーンは日本ではやらない」といった趣旨のコメントを出しました。
このように、行列というものは、人間のむき出しの欲望の発露となっているわけですが、この手のキャンペーンがもたらす混乱と得られる実利をどう天秤にかけるのか、今後の企業戦略にとって重要な判断になるでしょう。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』(鹿砦社)。
