「なんかすごいらしいね!」と躊躇なく買う度胸
こうした一連のキオクシアフィーバーを目の当たりにして、結局、株で成功する人は「度胸」があるんじゃないかな、と感じました。言い換えるなら「リスクを取れる」ということ。リスクを許容できない人は、そもそもこんな株を買えないから、利益も損失も無関係。リスクを取れるからこそ、大きな利益が転がり込んでくることもある。当然、逆に大損するケースもあるということになりますが……。
振り返ってみると、彼女は躊躇することなく「なんかキオクシアすごいらしいね!」と買った。私は「株価5万円は高すぎじゃないか? 元々1400円ぐらいの株だから落ちる時は連日のストップ安ってこともあり得るよ……。そうするといきなり300万円のマイナスなんてことにもなりかねない。そこそこいい車が1台買えるし、2年分の家賃になるよ……」なんてことを感じてしまった。
キオクシアが株価5万円台の時になぜ買えたのか? 彼女が購入に踏み切った理由を聞いたら、こう言いました。
「あなたが『キオクシアは上がっている』と言っていたし、私の地元・岩手県に工場ができて、いとこがそこに就職したら親戚一同『いい会社に就職したな!』と大喜びしていたんですよ。それだけ岩手にとっては星のような存在なので、多分すごくいい会社なんだな、と思いました」
素人がプロに勝てるのは「バブル相場」ならでは
私もそうでしたが、彼女もチャート分析や企業研究などすることなく、主に印象や雰囲気で買っていたということです。この一連の話を聞いた、マネーサイトの編集者はこう言いました。
「機関投資家などプロの投資家の場合、『ここまで株価が上がると、業績と比べて割高だ』など、バリュエーションを見て投資判断をしがちですが、個人投資家の場合、『この株、すごい上がってる!』と、企業のことを深く調べることもせず、勢いで投資して、大きな利益を得ることがあります。
キオクシアを筆頭にAI・半導体関連の一部銘柄が上がり続けていますが、このように『上がっているから、もっと上がる』というのは“バブル相場”の様相を呈していますよね。素人がプロの投資家に勝てるのは、バブルの時だけとも言われています。
今回は2人とも、きちんと利益確定をできたのは素晴らしいと思います。市場の“稲妻が輝く瞬間”をしっかり捉えることができたということでしょう。ただ、『上がっているから、もっと上がる』というバブル相場は、いつかどこかで終わりが来ます。今回の利益に味をしめて、『株価が2倍、3倍にならないとおもしろくない!』と資金をつっこんで、大損することのないよう気をつけてくださいね」
いやはや、株式市場の空気感って不思議ですね。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』(鹿砦社)。