上から見た新幹線電車の台車。車軸の隣にモーターが見える。JR西日本博多総合車両所一般公開イベントにて筆者撮影
直流モーターの長所と短所
モーターには、ざっくり言うと、直流電源で動く直流モーターと、交流電源で動く交流モーターがあります。それぞれ構造や制御方法が異なります。
直流モーターは、制御しやすいという長所があるため、電車のモーターとして長らく使われてきました。かける(印加する)電圧を変え、コイルに流れる電流を調節することで、回転速度と出力を容易に制御できるからです。
ただし、直流モーターには整流子があるという短所がありました。整流子は、内部で回転する電磁石(電機子)の磁極を変えるためのスイッチの役割をする部品です。それが回転するときは、電機子のコイルに電流を流すため、回る金属の端子と、動かないブラシがこすれ合う構造になっています。このため整流子は故障しやすく、こまめなメンテナンスを必要とします。
電車の直流モーター。右側に整流子の金属端子とブラシが見える。JR東日本東京総合車両センター一般公開イベントにて筆者撮影
交流モーターと制御技術
そこで、鉄道技術者たちは、電車に交流モーターを導入しようと考えました。交流モーターは、直流モーターとくらべると整流子がなく、構造が堅牢で、小型化や軽量化を図ることができるというメリットがあるからです。
しかし、そのような導入は長らく実現しませんでした。交流モーターを制御する技術の確立が遅れたからです。
直流モーターと交流モーターの特徴と、回転子(回転する部品)の構造。筆者作図
1960年代に入り、半導体素子を用いたパワーエレクトロニクスの技術が本格化すると、交流モーターの制御が可能になりました。また、1980年代に入ると、日本でVVVFインバータ制御と呼ばれる制御方式が導入され、交流モーターで駆動する本格的な営業用電車が走り始めました。
現在では、交流モーターで駆動する電車が増えつつあります。日本の新幹線に限定すると、すべての営業用電車がVVVFインバータ制御を採用し、交流モーターで駆動しています。これによって、制御装置とモーターの無接点化(電気的な接点がなくなること)が達成され、電車の点検箇所が減り、保守作業の効率化が実現しつつあります。
新幹線電車のモーター。左は100系で使われた直流モーター(出力230kW・重量870kg)、右は300系で使われた交流モーター(出力300kW・重量410kg)。出力と重量だけでなく、大きさのちがいにも注目。JR西日本博多総合車両所一般公開イベントにて筆者撮影
なお、電車では、すべての台車にモーターがあるとは限りません。この点については、次回のコラムでふれます。
【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術解説者。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。



