死後離婚の実益はまず、扶養からの解放です。三親等以内の姻族が親族で、同居していれば抽象的な扶け合いの義務はありますが、扶養の法的義務を負うのは、原則的に直系血族と兄弟姉妹のみ。ところが、姻族も親族として家庭裁判所の決定で扶養義務を負うことも。死亡配偶者の両親は一親等で、その範囲内ですが、姻族関係を解消することにより回避できます。
また、死亡配偶者がひとり息子だと先祖や親の祭祀を承継する立場ですから、生存配偶者が引き継ぐことを期待されることがあります。死亡配偶者の位牌や、その祭祀は別として、先祖や義理の両親のお墓や祭祀の承継までしたくない場合、死後離婚で断われます。
よって生存配偶者の自由を奪うことはできません。ただ、お嫁さんの心配を考慮した体制を整え、死後離婚の必要性を失わせることはできます。裕福なら嫁が相続できる養子縁組もひとつの方法として考えられますが、何より大切なのは、今後も互いの親愛の情を見つめ合っていくことでしょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2026年7月24・31日号