ヤクザとマネー・マル秘資料編 #3
杳として知れない暴力団の資金源やビジネスの実態を、『サカナとヤクザ』などの著作で次々と明らかにしてきた暴力団取材のエキスパート鈴木智彦氏。長年にわたる取材活動のなかで、日本最大の暴力団組織・山口組に関する様々な警察資料や内部資料を入手してきた。鈴木氏がみずからその貴重な資料について解説した2025年8月のマネーポストWEBプレミアムのライブ配信に、聞き手として週刊ポスト編集長の酒井裕玄が同席した。前回まで読み解いてきたのは、警察がつくった幹部の“名鑑”だった。これほど中身の詰まった警察資料が、なぜライターの手元にあるのか。話は、資料をめぐる“取材の経済”へと移っていく。
――そもそも、この警察資料は、今でも手に入るものなんですか。
「それが、六代目の時代になると、急に出なくなったんですよ。だから、書きにくくなった。五代目の頃はこれが基礎資料としてあったから、持っている人と持っていない人で、もう取材力の差が露骨に出た。今みたいにインターネットも無いですからね。この一冊を持っているかどうかで、書けるものが全然違ったんです」
――では、五代目の頃、鈴木さんはどうやって手に入れていたんですか。
「今は絶対にできないんですけどね(と前置きして)。昔は、毎月1回、マル暴……組対の刑事とカラオケに行くんですよ。マル暴もヤクザの歌が好きだから、『神奈川水滸伝』とか一緒に歌って盛り上がって。で、帰りに『タクシー代です』って、何万円か渡すんです。2万円とか3万円とか。そうすると何ヶ月かして、『鈴木さん、この間のアレ……俺、あるんだけど……』って、資料をくれる」
――それは、癒着ということになりませんか。
「癒着といえば癒着だし、良くないことですよ。ただ、当時は今ほどうるさくなかったし、彼らもそれで儲けていたわけじゃない。そういう関係性があった、ということです」
――刑事との関係は、ずいぶん気を使うものなんでしょうね。
「我々実話誌ライターとの関係はすごく微妙なんです。他に漏れると大変なことになる。だから義理場……例えば葬儀なんかで顔を合わせても、わざと目礼もしない(目も合わせない)。仲のいい刑事とも、会釈もしない。もう本当に、知らない者同士という感じにしておく」
――鈴木さんは普段ヤクザを取材しているわけですよね。その人間が刑事と繋がっていると、ヤクザ側から見て具合が悪い。
「よろしくないですね。『こいつ警察の犬なんじゃないか』と見られると、壁ができる。まあ、暴力団とのパイプさえあれば、マル暴に聞くことなんか基本ないんですよ。組のことは組に聞けばいい。ただ、警察しか知らない情報というのはある。さっき言った本籍地とか、愛人の名前とか。そういうのは、こっちで調べようがないですから。
新聞で暴力団記事を書く人って、ネタ元がだいたい警視庁の刑事なんですよ。でも警視庁の刑事って、県警から聞いたことしか知らない。だから、ネタ元としてはそんなに強くないんです」
さらに鈴木氏は、ヤクザと関わる警察組織にも明らかな序列があり、警視庁がトップではないと言う。
