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キャリア
難関大の総合型選抜中止が意味すること

京都大・神戸大など、難関国立大学の総合型選抜が続々と廃止 「推薦入試の拡大」報道と現実の乖離はなぜ起きるのか

「丁寧な入試」を支えきれない大学教員の重い負担

 神戸大学の「志」は、9月に出願。書類審査、総合問題、模擬講義を受講させてレポートを書かせるなどで1次選抜をする。11月上旬に面接や口頭試問、ポスタープレゼンテーションなどの最終試験を実施し、11月下旬には合格発表を行う。合格者には、入学前授業として添削指導や課題研究、さらに2回のスクーリングなども行い、学生同士の交流も作ってきた。まさに国が推奨する「丁寧で多面的な入試」であろう。

 志願者数は増えてきており、2025年度入試では募集定員68人に対して志願者が199人で、平均倍率は3倍ほどで、7倍以上の学部もあった。

 では、なぜ、その人気が高まった入試を終了するのか。神戸大学ニュースネット委員会の2026年4月27日配信の記事は「一部の教員からは、実施のための負担が大きい割に定員も少なく、効果が上がっているのか、という声も上がっていた」と報じている。

 日本の大学では、入試業務を大学教員が担う。一般選抜の問題も教員が作る。そして推薦入試や総合型選抜では書類審査、面接なども基本、教員が担当する。私立大学の指定校推薦であっても面接は大学教員が面接官になる。

 大学教員は授業や卒論指導、就職指導、広報など様々な仕事をし、加えて研究をして論文も書く。激務なのである。

 以前、ある大学教授がこう話していた。

「研究者は50歳になると終わる」。50歳にもなると大学の様々な業務の責任者になっていく。授業、卒論指導、広報、カリキュラムのアップデートなど、山のように仕事がある。そういった大学の業務で忙しくなり研究をする時間がなくなっていくからだ。そのようにただでさえ、仕事量が多い大学教員に「丁寧な入試をしろ」というのは無理難題なのである。

総合型選抜を行うアメリカとはどこが違うのか

 アメリカの大学入試はすべて総合型選抜である。アメリカの大学の場合、入試は入試専門職員たちが担当し、学生を選抜していく。しかし、日本の場合はそうもいかない。今、 日本でも入試業務には大学内の優秀な職員が配置される。それでも教員の負担はなくならない。一般選抜の問題は教員が作るし、推薦・総合型選抜の面接などは教員が担う。アメリカの大学の場合、予算があるから入試専門の職員を増やしたり、育てたりできるが、日本の大学はそうもいかない。これは2010年代から指摘されてきたことだ。

 今回は神戸大学の総合型選抜「志」入試の終了が発表されたことを機に日本の大学受験の現状について言及した。学生の能力を多面的に評価して合否を決める「丁寧な入試」の拡大は実際問題として難しいのである。後編では、米国の名門大学でも学生の学力不足に頭を抱えている実態について報告する。

▼▼▼後編記事▼▼▼
【つづきを読む→】米カリフォルニア大学で留年者増加、日本国内の国立大学推薦入試縮小へ… いま世界の大学が直面する「学力のある学生」を選抜する難しさ

【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(ともに青春出版社)も話題に。『ハナソネ』(毎日新聞社)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)、『東洋経済education×ICT』などで連載をしている。受験の「本当のこと」を伝えるべくnote(https://note.com/sugiula/)のエントリーも更新中。

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