地面師詐欺事件を追ったふたり
「詐欺師は9割5分、本当のことを言う」
森:地面師詐欺の立件はハードルが高い。警察には地面師を専門にする捜査官がいるんですが数人で、数が少ないんですよ。その上、「私が騙しました」と犯意を自白する人間を捕まえないと詐欺は成立しないから、捜査がすごく難しいんです。
地面師事件は詐欺の実行犯がなりすまし役なので、このなりすまし役さえ逃してしまえば、あとの人間は「なりすましに騙された」と言えるんです。実際カミンスカスもそう主張している。
河合:ただやっぱり、複数の事件で同じ人が関わるというのは特徴で。カトウも収監中、「お前はこの人を知っているか」と、顔馴染みの地面師をよく見せられたそうです。
森:下っ端の人間は入れ替わり立ち替わり登場するけれど、大きな絵を描く「大物地面師」と言われるのは数が少なく、せいぜい10人くらいしかない。
河合:カミンスカスは「私もなりすまし役に騙された」と主張するので、一緒に動いていたカトウに何度も確認したんです。カトウは罪を認めているので彼の主張は「さすがに無理があるんじゃないか」と言っていましたが。
森:カミンスカスは「主犯は他にいる」という主張なんだろうなと。たしかに、彼が加わる前に元々絵を描いていた奴がいて、彼はその計画に後から加わった。だからこそ、“主犯”が普通は行かない取引現場にも行っている。「自分は主犯じゃない」という主張にも一理あると、最終的に僕はそう思いましたけどね。
河合:地面師たちは、ドラマみたいに自分を「地面師」だなんて言わないんですよね。現場でもなりすまし役のことを「地主」と呼んで、詐欺なんてしていないと言える状況を作っていく。
森:僕たちも彼らに取材するわけだけど、彼ら詐欺師は9割5分、本当のことを言うんですよ。で、残りの5分で嘘をつく。だから嘘を見極めるのが難しいし、詐欺師という業界が成立する。
