香港を代表する実業家の動きが意味することは(李嘉誠氏。Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今回は香港を代表する実業家が海外資産の売却を加速している背景と、米トランプ政権の危機感について解説する。
政治介入でパナマ運河の港湾事業を突然失う
香港を代表するコングロマリット企業である長江和記実業(00001、香港メインボード)の創業者で、2026年のフォーブス世界長者番付において21年連続香港第1位の李嘉誠氏は今年に入り、海外投資からの撤退を加速させている。
中国メディア(財聯社)は8月11日、長江和記実業の子会社でインフラ投資プラットフォーム企業の長江基建集団(01038、香港メインボード)が外資金融機関を通じて「オーストラリアの分散型エネルギー事業会社「EDL Energy」の株式売却の手続きを開始した」と報じている。20億~30億オーストラリアドル(2260億~3390億円、1オーストラリアドル=113円)の範囲で、年内にも正式に契約を結びたい意向のようだ。今年に入り、鉄道リース、送電、電信サービスといった3件の英国インフラ関連資産を合計1672億香港ドル(3兆3440億円、1香港ドル=20円)で売却している。これらの突然の事業撤退には、第二次トランプ政権による政治介入によってパナマ運河での港湾事業を突然失うことになった事件が背景にある。
パナマ政府は2026年2月、官報を通して長江和記実業の傘下企業が20年以上にわたって運営を続けてきた港湾事業に関する契約について、取り消す最高裁判決を公表。これにより、港湾事業経営権はパナマ政府によって強制的に接収、資産を没収されることになった。長江和記実業はパナマ政府に対して20億ドル(3180億円、1ドル=159円)を超す賠償金支払いを求め、国際仲裁を開始している。
