新制度「デジタル遺言」を活用すれば相続手続きが一気に簡略化される(写真:イメージマート)
煩雑なイメージが付きまとう相続だが、近年、面倒な手続きから解放される新制度も登場。これらをうまく活用すれば、“最大の財産”とも言うべき時間を節約できる「時短相続」へとつながる。今回は、遺言書作成に関する新制度について紹介する。
今後3年以内に運用が開始される予定の「遺言書のデジタル化」
相続の手続きを進めるうえで欠かせないのが「遺言書」だ。遺言書がないと相続人全員で遺産分割協議を行なう必要が生じ、膨大な書類集めなどに数か月を要するケースが少なくない。他方、現行の遺言書は作成や保管に手間がかかり、方式に不備があれば死後に問題が生じることもある。
そうした負担やリスクを減らし、遺言作成から相続開始後までの手続きを劇的に簡略化する制度が成立した。それが「デジタル遺言」である。東京国際司法書士事務所代表で司法書士の鈴木敏弘氏が解説する。
「デジタル遺言は今年6月の改正民法で成立した新しい制度で、正式名称は『保管証書遺言』です。この制度により、誰でもスマートフォンやパソコンを使って簡単に遺言書を作成・保管できるようになります」(以下、「 」内は鈴木氏)
デジタル遺言は法的に、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言に加わる4つめの遺言方式となる。この新制度は今後3年以内に運用が開始される予定で、それにより簡略化される手続きについては後述するが、すでに一部の遺言書ではデジタル化がスタートしている。
「保管証書遺言に先駆けて、2025年10月に公正証書遺言の作成手続きがデジタル化されました。従来、公正証書遺言は公証役場で公証人と2人の証人が立ち会って遺言書を作成して署名・押印するのが基本でしたが、デジタル化によって電子データに電子サインと電子署名を付したものが公正証書遺言の原本として認められるようになった。これまで面倒だった遺言者、公証人と証人の直接立ち会いの手間を省くことが可能になったのです。
この原本は日本公証人連合会が運営するシステム上で保管されて、電子データや紙の書面で交付・発行されます」
