地方政界で権勢を誇る実力者たち(左から柳居俊学氏、猫田孝氏=共同通信社、水野富夫氏=ホームページより)
福岡県議会の「ドン」として君臨し、議会人事や県政を牛耳ってきた蔵内勇夫・県議会議長が辞職した。辞職に至る経過のなかで明らかになったその権力構造には驚きの声も上がったが、実は全国を見渡せば蔵内氏をも上回る権勢を誇り、国会議員すら頭が上がらない地方議員がいる。蔵内氏が政界を去った後の「地方議会のドン」強権番付で横綱を張るのは――。【全文】
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「総理に逆らった男」として全国的に注目
「議長になるには1000万円」「副議長なら500万円」という金銭授受疑惑で揺れる福岡県では、「県政のドン」と呼ばれる蔵内議長がついに議員辞職に追い込まれた。しかし、蔵内氏の例は氷山の一角に過ぎないというのだ。
自民党を皮切りに多くの政党を支えてきた経験を持つ元民主党事務局長の政治アナリスト・伊藤惇夫氏が言う。
「地方政界の実力者として中央に名前を知られている人物と言えば、真っ先に挙げられるのは岐阜の猫田孝・県議と愛知の水野富夫・県議でしょう。福岡の蔵内氏を大関とすれば、猫田氏、水野氏は東西の横綱クラスです」
岐阜の猫田孝・県議(写真/共同通信社)
東の横綱、「岐阜のドン」と呼ばれる猫田氏は現職県議で全国最多の当選14期。1974年の初当選以来、「保守王国」の岐阜で52年にわたって県政に重きをなしてきた。現在も自民党岐阜県連会長代行を務めている。
猫田氏が「総理に逆らった男」として全国的に注目されたのは小泉純一郎・首相による郵政選挙(2005年)の時だ。
自民党執行部は郵政民営化に反対した議員に離党を迫り、岐阜では造反組の野田聖子氏、古屋圭司氏らに刺客候補を立てたが、当時岐阜県連幹事長だった猫田氏は「県連としては堂々と『造反組』を支援していく方針に変わりない」と野田氏らを全面支援。さらに野田氏の対立候補の自民党新人を応援した松田岩夫・元特命相を逆に県連として処分する剛腕を見せた。
地元の自民党議員が語る。
「猫田さんが知事以上の力を見せつけたのが、県の指定金融機関を岐阜最大の地銀・十六銀行から猫田さんの地元・大垣市の大垣共立銀行に変えたことです。知事は反対したが、猫田さんが自民党県議団を動かして知事提案を否決させた。前々回の知事選では猫田さんが新人の江崎禎英氏を擁立し、現職を応援した野田聖子さんや古屋圭司さんらと激しく対立。選挙は江崎氏が負けましたが、猫田さんはすぐに知事や国会議員を集めて宴会を開いて手打ちを済ませ、昨年の知事選で江崎氏を当選させた」
県政への影響力は絶大で、岐阜県議会の議長応接室は現職の議長ではなく、もっぱら「猫田専用応接室」として使われてきたという。
中央政界とのパイプも太い。猫田氏のパーティーには麻生太郎・元首相や石破茂・前首相らが駆けつけたこともあり、若い頃から自民党青年局の活動で一緒だった麻生氏とは今も「猫ちゃん」「太郎ちゃん」と呼び合う間柄で知られる。

