先天性の疾患という理由で82歳の女性を小児循環器科に回した医師
専門医制度の笑い話を一つ語ろう。
循環器専門医から小児科医が独立して小児循環器専門医を標榜することになった。
ご存じのように、先天性心疾患は子供に偏って存在する。しかし成人になって発見される例も決して少なくはない。この先天性心疾患を循環器科か小児科かどちらの専門にするか。熟議の末、日本循環器学会はそのレパートリーから先天性心疾患を外し(ということは専門医試験に出ない)、全面的に小児科のほうに譲った。
医師・検査技師のある会合での出来事。「82歳の老婆がなぜか小児循環器科に回された」という事例が話題になった。理由を聞くと、患者を小児循環器科に回した医師は、先天性心疾患と診断したものの、自分が成人病の循環器専門医であることを理由に「これは私の専門ではない」と言って小児循環器科に回したという。専門バカの典型である。
こういう医学の一般常識のない医師が患者にとって良い医師であるはずがなく、この制度は何よりも患者にとって益より害が大きい。
(第2回に続く)
【プロフィール】
坂本二哉(さかもと・つぐや)/1929年、北海道釧路市生まれ。海軍経理学校予科、旧制二高を経て東京大学医学部卒業。東大医学部第二内科入局、新制東大大学院卒業。米国留学。東大医学部講師などを経て東大健康管理センター教授。東大時代から一貫して臨床を重視、退官後も2024年まで民間医療機関の第一線で患者を診療した。「日本心臓病学会」「日本心エコー図学会」「世界非侵襲心臓病学会」「アジア・太平洋心エコー図学会」創立者。