「退勤時間が来た」と危篤患者を放置し帰宅した研修医
しかし現実には、命を軽視する無責任な医師の何と多いことか。私が直接見聞きした医師の問題行動をいくつか挙げてみる。「臨終に駆けつける家族を待たずに救急処置の電源を落としてしまった」、「子供の学校行事に出席するために手術途中で手術室から姿を消した」、「急変を知らせても来院しなかった」、「時間だからと満足な縫合もせずに帰宅し、その後縫合不全で出血した」等々、数え上げるだけで気が滅入ってくる。
しかも、こうしたダメ医者に譴責・退職を命じた院長が、医師を派遣した大学から虐めを受けて失職する羽目になった例もあった。患者を見捨てた医師に、その後の診療をさせなかった院長が逆に「パワハラだ」として攻撃された例もある。医道に反してはいまいか。
マスコミでは報道されなかったが、都内の大病院の研修医が退勤時間が来たことを理由に危篤患者を放置して帰宅したことがあった。研修医の担当患者の病状が急変して危篤に陥ったため、看護婦は病院の玄関先まで研修医を追いかけたが、この研修医は「夕方5時になったから」と言って看護婦の手を振り払い帰宅してしまった。院長は、その医師にそれ以上の研修の続行を許可しなかった。当然のことだ。
(第1回から読む)
【プロフィール】
坂本二哉(さかもと・つぐや)/1929年、北海道釧路市生まれ。海軍経理学校予科、旧制二高を経て東京大学医学部卒業。東大医学部第二内科入局、新制東大大学院卒業。米国留学。東大医学部講師などを経て東大健康管理センター教授。東大時代から一貫して臨床を重視、退官後も2024年まで民間医療機関の第一線で患者を診療した。「日本心臓病学会」「日本心エコー図学会」「世界非侵襲心臓病学会」「アジア・太平洋心エコー図学会」創立者。