西村誠司社長が挑戦する医療業界の変革のビジョンとは
異色のCMで話題を集める「にしたんクリニック」を展開するエクスコムグローバル社長の西村誠司氏(56)には、思い描く「未来図」がある。不妊治療を、一部の人だけが受けられる「特別な医療」から、誰もが必要な時にアクセスできる“社会インフラ”にすることだという。「平日22時までの診療」を打ち出した西村氏が「にしたんARTクリニック」を通して挑戦する医療業界の変革のビジョンとは。本誌編集長がインタビューした。【全3回の第2回】
M&Aで既存の院を引き継いだ時の苦労
一般企業が社員に対して行なう不妊治療サポートにも協力しています。企業側が「不妊治療をしている社員を支援したい」と思っていたとしても、具体的に何をすればいいか分かっていない例は多いんです。だから我々が企業を回り、社員が匿名で相談できるホットラインを無償で提供したり、簡単な婦人科系の検査を提供したり、セミナーを実施したりしています。
そこは僕らの持ち出しになる部分もあるのですが、まずは当院を知ってもらい、必要な時に思い出して来院してもらえればいいというスタンスです。提携企業も増えていて、もうすぐ2000社になります。
〈こうした患者目線の病院づくりに対しては、働き手となる医療従事者からの理解が得られないこともあったと西村氏は振り返る。〉
不妊治療に携わる方々には、「病院は朝9時から17時、18時まで」という固定観念がある方も多く、夜まで働くという発想がない人もいて、不満の声もかなりありました。
新しくクリニックをつくる場合、最初から「22時まで診療します」と説明して採用できるのでいいんです。でも、M&Aで既存の院を引き継ぐ場合は違います。これまで夕方まで働いていた人に、突然「これから22時までやります」と言えば、「そんな条件で採用されたわけじゃない」となりますよね。退職者が出て、半分くらいスタッフが入れ替わった院もありました。
ただ、辞めたら補充すればいいという単純な話ではありません。不妊治療ができる医師は、国内で飛行機を操縦できるパイロットくらい少ないんです。東京や大阪、名古屋、福岡ならまだ人は集まるかもしれない。でも地方で同じように医師を集めようとしたら、相当大変だと思います。
大学などの教育現場でも、不妊治療の医師になる道は選ばれにくい。だから僕らは、これまでお産を中心に経験してきた医師でも、うちに来ればイチから不妊治療を担当できるように訓練する仕組みを整えています。
