「安い中国産」を作り続けられる秘密とは(イラスト/井川泰年)
技術力と圧倒的な価格競争力で、世界の様々な市場で存在感を発揮する中国。その強さの秘密はどこにあるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、最新の中国経済事情を紹介し、日本の生き残り策を提言する。
養豚場をビル内に作る中国
中国の人型ロボット(ヒューマノイド)が、超速で進化している。北京で8月下旬に開かれた「世界人型ロボット運動会」では、陸上100mで中国のX-ヒューマノイド(北京人形機器人創新中心)が開発した「天工」が9秒32で走り、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)の世界記録9秒58を上回った。4月に北京で開かれたハーフマラソン大会でも、中国のスマートフォンメーカー・オナー(栄耀)が開発した人型ロボット「ライトニング」が50分26秒で完走し、人類の世界記録を6分以上も上回った。1年前まで人型ロボットの記録は全く人間に追いついていなかったのだから、驚くべき進化である。
すでに中国軍はライフル銃を背負ったロボット犬の映像を公開しているが、人間以上のスピードで走る人型ロボットの大群が銃器や爆弾を装備して突撃してきたら、防ぎようがないだろう。アメリカ政府は7月、国家安全保障に対する「容認できないリスク」として中国を念頭に外国製の新型ロボットの輸入を禁止すると発表したが、今後さらに中国製の人型ロボットは世界に普及していくに違いない。
人型ロボットに限らず、昨今の中国の技術革新はすさまじい。AI(人工知能)スタートアップ企業ディープシークの低コスト生成AIは先行していたアメリカのAIに追いついたとされ、さらに同じ中国のAIスタートアップ企業ムーンショットAIの最新モデル「Kimi K3」は、オープンAIやアンソロピックの最高峰モデルに匹敵する性能をはるかに低いコストで実現したと報じられている。
あるいは自動運転。これもアメリカのWaymoやテスラが先行していたが、中国勢が主要都市で実証実験を進め、急速に追いつき追い越そうとしている。たとえば、インターネット検索最大手のバイドゥ(百度)は、2030年までに自動運転タクシーを合計100都市で展開する方針を発表し、独自の自動運転技術を搭載したEV(電気自動車)を量産して着々と推進している。また、トヨタと提携したPony.ai(小馬智行)は2022年に中国で初めて完全無人自動運転を実現し、2024年にはアメリカ市場に上場して世界展開を本格化させている。
さらに、最近話題になっているのが「養豚ビル」だ。これはビルの中にある養豚場で、農畜産業振興機構のレポート【*】によれば、年間210万頭出荷する6階建て21棟、同130万頭出荷する5・6階建て28棟の“大規模団地”や同120万頭出荷する26階建て2棟の高層ビルなどが2020年以降に続々と建設された。
【*農畜産業振興機構レポート(畜産の情報2025年4月号)「中国の養豚をめぐる動向と大規模化を担う『ビル養豚』の現状」】
