一人暮らし高齢者は詐欺の格好のターゲットになり得る
人恋しさと不安があると、その心の隙につけ込まれることもあるから注意が必要です。先日、私がAさんの店にいた時、彼女のスマホが鳴りました。
話を聞くと、相手は電話会社を名乗っており、インターネット回線のキャッシュバック申請について話しているようですが、どうも様子がおかしい。電話越しに聞こえてくる男性の口調は荒々しいし、彼女はなんだかペコペコしながら「はい、はい」などと言っている。これが本当に必要な手続きの電話なのか、営業電話なのか、はたまた詐欺電話なのか、それすら判別できないのです。
あらためて話を聞くと、Aさんはそんな回線の契約をしたことなどないそうなので、少なくとも本当に必要な手続きの電話でないことはわかりました。そこで私が、「今後、同じ番号からかかってきても、Aさんが対応する必要はないですよ」と伝え、その場で着信拒否の設定をしてあげました。
その時私は、しみじみと「こうやって、オレオレ詐欺(特殊詐欺)がはびこるのか……」なんて思った次第です。「怪しい」と思うかどうかのアンテナは、結局のところ情報に触れているかどうかや、自力で社会生活を送ったことがあるかどうかで磨かれるもの。なかでも人恋しさと不安に駆られる一人暮らし高齢者は、詐欺の格好のターゲットになり得ます。
初の一人暮らしに右往左往する人生の先輩の姿を見ながら、「自力で生活をする」ことの大切さとともに、「支え合う社会」の必要性を痛感しました。今後も一人暮らし高齢者は増加していくのは間違いないでしょうから、社会的課題として取り組まなければならない問題だと思います。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』(鹿砦社)。