「責任ある積極財政」と言いつつ「無責任な放漫財政」ではないか(イラスト/井川泰年)
政府はAI・半導体や防衛など17分野への官民投資を促進する「日本成長戦略」の実行計画を年内に策定することを決めた。こうした高市政権の動きに対し「どれだけ投資を拡大しても効果は期待できない」と断じるのは経営コンサルタントの大前研一氏。何が問題で、日本の衰退を止めるにはどうすればよいのか? 大前氏がその解決策を提言する。
高市日本が「もう一度、世界のてっぺん」にはなれない理由
円安が止まらない。先のG20(財務相・中央銀行総裁会議)でベッセント米財務長官が「日本側にリフレ政策はやめるべきだと伝えた」と明らかにしたことでいったんは円高に振れたが、再び円安基調になっている。
ベッセント財務長官は日本に財政支出の拡大や低金利を重視するリフレ政策からの転換(円高誘導)を求め、さらに「今は私が胴元だ(I am the house now.)」「我々が日本円に介入する時は、日本銀行が何をしようとしているのか、日本の政策当局がどう動くのか、かなり正確に把握している」「私に逆張りしたければ、そうすればよい」と投機筋の円売りを牽制した。これに対し、片山さつき財務相は「『胴元』という見出しを見て、日本語の語感だとちょっと怖いですよね」と戸惑いを隠さなかった。
一方で、高市政権の来年度予算の概算要求総額は過去最大の143兆円に達し、4年連続で過去最大を更新した。片山財務相は「もはや予算にシーリング(天井)と呼ぶべきものはない」「時代の変わり目を象徴する非常に画期的なものだ」と述べている。
予算は“青天井”になったわけで、高市首相は「責任ある積極財政」をスローガンにしているが、これは「無責任な放漫財政」でしかない。
財務省によると「国の借金」は、今年6月末時点で1346兆6833億円に達して過去最大になった。日本の借金はGDP(国内総生産/約600兆円)の2倍を超え、主要先進国の中で最も高い水準にある。
にもかかわらず、高市首相は「もう一度、日本を世界のてっぺんに」を標榜し、投資を拡大している。その象徴が「日本成長戦略」で、AI(人工知能)・半導体、情報通信、防災・国土強靭化、防衛、航空・宇宙など17分野に370兆円の莫大な官民投資をするという。
だが、どれだけ税金を注ぎ込んでも、高市日本は絶対に「もう一度、世界のてっぺん」にはなれない。なぜか? 日本が衰退している根本的な原因分析ができていないからだ。
いまや日本は凋落の一途だ。IMF(国際通貨基金)の最新見通しによると、GDPはインドとイギリスに抜かれて世界6位に転落し、1人あたりGDP(約560万円)はとっくに香港や台湾、韓国に抜かれて世界38位になっている。
そればかりか、輸出額でも韓国とイタリアに抜かれて7位になった。日本企業は円高の頃、生産を積極的に海外展開したせいもあるが、日本に比べると韓国は人口もGDPも4割強、イタリアは人口が5割弱でGDPが6割弱だ。そういう国に日本は輸出額で後塵を拝してしまったのである。
