「受かりそうな学校を探したら、この大学が出てきました」
一方、高校生が大学や学部を選ぶ理由を聞いて、「返答に戸惑うこともある」と語るのは、首都圏の私立大学で長年教員を務めてきた男性・Bさん(60代/文学系)だ。
「あくまでも私個人の感覚ですが、高校生が“子どもっぽくなっている”という気がしますね。以前は受験を考える高校2、3年生も、しっかり大人として会話できる子が多かった印象です。しかし、最近では返答に困る質問をしてくる高校生や、そもそもコミュニケーションの取り方に違和感を覚えるような高校生も多い。
たとえば、今年8月のOCでは高校3年生から『何も準備してないんですけど、自分でも受かりそうな学校を検索したら、この大学が出てきました』と言われ、戸惑いましたね(苦笑)。
あとは、『数学が苦手だから、文学系なら自分でもできそうかなって思ったんで』という、身も蓋もない相談もありました。本来は、もう少し言葉を選ぶものかなと思いますが、よく言えば今の高校生は素直なのでしょう」(Bさん)
「とにかく年内に合格を」と考える家庭が増加
進学相談でこうした状況が生まれる背景には何があるのか。別の私立大学で進路相談の担当をしている職員の女性・Cさん(40代)は、「入試のあり方が親世代の時代とは様変わりした」ことを挙げる。
「私たちの時代と、入試のあり方は大きく変わりました。一般選抜だけを考えるのではなく、総合型選抜や学校推薦型選抜などを利用して、とにかく“年内に合格を得たい”という家庭が増えていると、相談の現場では感じます。いわゆる、『年内入試』の広がりです」(Cさん)
「年内入試」とは、年内に合否が判明する入試を指す呼び方で、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜などが含まれる。もっとも、これらの選抜がすべて年内に終わるというわけではない。書類選考や小論文、面接などを組み合わせる形式のほか、英語資格や検定の成績を評価に活用する方式もあり、その内容は大学によってさまざまだ。
前出のCさんは、こう続ける。
「私がOCで面談を担当した保護者や高校生も、6月の時点で『まだ何も準備していないが、とにかく年内に決めたい』とお話しされていました。このほか、一人で相談ブースに来て、『親を安心させたいので、年内に合格が出る入試方式を検討しています』という高校2年生もいましたね。
昔と違って、年明けの一般選抜だけに絞ることを、リスクだと感じる家庭も増えているのでしょう。『うちは浪人はさせられないので、チャンスが多い方がいい』と話す保護者も多いです」(同前)
学びたい内容、合格の可能性、卒業後の就職先──。大学選びで何を重視するかは、本人と保護者の間でも異なる。年内入試が広がるなか、オープンキャンパスの現場では、参加者たちの本音が見え隠れしているようだ。