この場合、占有者として注意義務を果たしていれば免責され、ビルのオーナーが無過失責任を負うことになります。建築基準法違反の階段をテナント側は勝手に修繕できません。オーナーに注意喚起し、客にも張り紙などで警告していれば免責される可能性があります。
しかし美容室は、予約客や美容サービスを受けた顧客に対しては、「美容サービスを提供する」という特別な関係になったことから、顧客に対し美容サービス提供義務の付随的義務として、客の生命や身体等を危険から保護するよう配慮すべき信義則上の義務(安全配慮義務)を負うと解されます。
そうすると、2階にある美容室の利用客は階段を使わざるを得ないので、階段で事故が起きないように配慮する義務があります。先ほどの例であれば、踏面が狭いことを注意喚起する張り紙に加え、足元に不安のある高齢者であれば介添えなども検討されるとよいと思います。
そのほか、階段が暗ければ昇降に不足しない照明を設置する、雨の日に床が濡れていれば滑らないよう水分をふき取る、障害になる物を置かないなど、階段事故の原因になりそうなことへの注意を尽くせば、事故が起きた場合、責任を否定できると思います。
安全配慮が不十分なために起きた事故の責任の程度は、客の受傷の内容や客自身の落ち度等も関係するので一概にはいえません。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2026年10月29日・11月5日号