親の認知症対策として最近注目されている「家族信託」と「成年後見制度」。それぞれにメリット/デメリットがあり、補完しあって超高齢社会に役立つ仕組み・制度だという。ここでは「家族信託」について、司法書士みそら総合事務所代表で、家族信託専門士の酒井俊行さんに詳しく聞いた。
「家族信託とは、文字通り信頼できる家族に自分の財産の管理や処分を託せる方法です。平成18年の信託法改正で、営利を目的としない家族間での信託がしやすくなったことで、成年後見制度では制約の多い財産管理を柔軟に行うことができます。
たとえば親が認知症になり判断能力が低下すると、こんな困りごとが起こりがちです。
●その親名義の定期預金の解約ができなくなる。
●その親名義の不動産の売却ができなくなる。
●その親名義の不動産(賃貸物件など)の管理・運用ができなくなる。
●その親が相続人のひとりである場合、遺産分割協議ができず相続手続きが滞る。
こうなると親の財産を本人の介護費用に使うこともできなくなってしまいます。しかし事前に親(委託者)と子(受託者)が家族信託契約を結んでいればこれらの問題もスムーズに解決できます」(酒井さん。以下同)